【平成物語12】カープ第2次黄金期の幕開け~25年ぶりVの感慨

 「平成28(2016)年 広島カープ25年ぶりリーグ優勝」

 ベテランの黒田博樹と新井貴浩が、涙を流しながら抱き合った。2016年(平成28年)9月10日、広島が東京ドームで巨人を下し、25年ぶりのリーグ優勝を決めた。広島の街は人があふれ、歓喜の輪がいくつもできていた。その様子は、球団創設26年目で初優勝した1975年(昭和50年)と同じようなお祭り騒ぎだった。

 25年ぶりの歓喜に松田元オーナーは「いったん落ちたらなかなか元に戻らないと痛切に分かった」と、低迷期を振り返った。1996年(平成8年)に巨人の大逆転で優勝を逃してからは、坂道を転がるように98年(同10年)から15年連続Bクラスという屈辱を味わった。

 平成に入ってFA制度、ドラフトの逆指名制度が導入されたのも低迷の要因であった。しかし、松田オーナーは「今まで優勝できてないということは、結果的に言えば理由になっていたと思うけど、自分の中ではルールが変わろうと、道をつけるという気持ちが随分強かった」と認めなかった。ドミニカのカープアカデミーをはじめ独自のチーム強化策で低迷期からの脱出を試みた。

 2009年(平成21年)にはマツダスタジアムが開場。1988年(昭和63年)に開場した東京ドームを筆頭に平成に入ってプロ野球球団の本拠地はドーム全盛時代となったが、時代の流れにあらがうように天然芝のオープン型球場を建設した。追い風は他球団の裏金問題が発覚し、ドラフトが2007年(平成19年)に再び入札制度となったこと。野手は広いマツダスタジアムに合った俊足、強肩の選手を中心にドラフトで指名することができた。

 さまざまな客席のある新球場の開場でハード面が充実。斬新なグッズや球場でのフードなどアイデアを振り絞りファンの心を捉えた。昨オフ巨人にFA移籍した丸佳浩を筆頭に田中広輔、菊池涼介、鈴木誠也らが着実に力をつけ13年(平成25年)に16年ぶりのAクラスで初のCS進出。ハード、ソフト面ともに充実し14年(平成26年)には「カープ女子」が流行語大賞トップテンに選ばれるなど、全国の注目の的となった。

 特に黄金期幕開けの16年は、新井の2000安打にはじまり黒田の200勝、優勝そして黒田の引退と数々のドラマが生まれた。戦力は入れ替わりながらも一度築いた王国は揺るがない。3連覇とともに入場券の入手が困難な状況が続き、話題にもなっている。

 1945年(昭和20年)に原爆が投下された広島にとって、負の遺産が原爆ドームならカープは復興のシンボルであった。1965年(昭和40年)のドラフト制度導入されたことで“育成のカープ”の本領を発揮。初優勝した75年から91年(平成3年)までの17年間で6度の優勝、第1次黄金期を築いた。そして平成が終わろうとする今、3連覇で第2次黄金期を迎えている。(デイリースポーツ・岩本 隆)

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