赤松「僕は幸せ者です」胃がんとの闘い支えてくれたファンに笑顔で別れ
「広島1-4中日」(27日、マツダスタジアム)
目に映る景色が懐かしかった。九回表。広島・赤松真人外野手(37)は中堅に笑顔で立った。「やっぱり守りやすい」。世界を驚かせたスパイダーキャッチや数々の美技は、この場所で生まれた。3年ぶりの1軍出場。幸せを感じながらのラストステージだ。
試合中盤から出番に備えた。八回1死一、三塁から長野が安打を放っていればベテランの代走として出場していたという。「同点の走者。病気になる前と一緒だよ」。大事な場面での起用。首脳陣からの信頼の証だった。
始球式では長男・慶馬くん(10)がマウンドに上がり、次男・郁馬くん(7)が打席に立った。パパは捕手を務め、投球を受ける。ワンバウンドになり、郁馬くんがバットを振れなかったが、最高の思い出になった。
16年12月に医師から胃がんを宣告された直後は「どん底に落ちた」。復帰を目指すも、闘病中は何度も心が折れた。それでも全国から手紙などをもらい「本当に力になった」。支えてくれた多くの人に、感謝の思いは尽きない。
ナインらの手で行われた胴上げでは5度、宙を舞った。引退スピーチでは「僕は幸せ者です」と言った。涙はない。いつも見せる笑顔で、赤松はユニホームに別れを告げた。