岩本「悔いなし」引退 広島で生まれ、育ち…プロ生活11年間「幸せ」
広島は2日、広島市内の球団事務所で岩本貴裕外野手(33)、飯田哲矢投手(28)、横山弘樹投手(27)、育成の木村聡司内野手(23)、岡林飛翔投手(20)に来季の契約を結ばない旨を伝えた。岩本は広島商、亜大を経て08年度ドラフト1位で入団。2年目に14本塁打を放ったものの、その後は故障などに苦しみ、今季はわずか1試合の出場だった。現役引退を表明し「悔いはない」と11年間のプロ生活を振り返った。
晴れやかだった。戦力外通告を受けた岩本は時折、笑顔を見せながら、これまでの野球人生を振り返った。広島に生まれ、育ち、幼少期から応援してきたチームのユニホームに袖を通した。かけがえのない11年間にただ、感謝するだけだった。
「カープで野球をやらせてもらったことに感謝しています。なかなか成績を残せなかった自分が、ここまで野球をやらせてもらった。幸せでした。悔いはありません」。真っすぐ前を見つめながら言葉を紡いだ。
2年目の10年に14本塁打。持ち味のパワーを生かすため、ノーステップ打法に挑戦したことが実を結んだ。「クルーンから打ったのが一番思い出に残っている」。8月27日の巨人戦で九回に守護神から同点2ランを放ち、サヨナラ勝利の道を切り開いた。延長十一回に放った本塁打も含めて1試合2発と暴れた。
長距離砲として覚醒したかに思われた野球人生だが、順風満帆には進まない。翌11年は開幕から慢性的な右膝の痛みに悩まされ、ノーステップ打法を断念。11月に手術を受けた。15年にも血管の不具合「左腋窩(えきか)動脈閉塞(へいそく)症」でメスを入れた。
「僕が若い頃、鞘師さんや佳紀さん(尾形)にアドバイスをもらったので」。近年は若手の台頭もあり、出番が減った。今季はわずか1試合の出場だった。それでも培ってきた経験などを若鯉に積極的に伝えて成長を促した。広島の町に夢を与え続けるのがカープの役割。これからのチームを支え続けてほしいとの思いがあった。
トライアウトを受ける予定はなく「悔いなくできたし、野球は辞めようと思う」と現役引退を表明した。今後については未定で、家族などと話し合って第2の人生を歩んでいく。
「小さい頃から市民(旧広島市民球場)に応援に行き、地元球団に入れた。ガンちゃん、ガンちゃんと、たくさんの人に声をかけてもらったことがうれしかった。広島って良いなって思いました」。広島を愛する男は、最後まで笑顔を絶やさなかった。