白血病と闘う北別府氏がブログを書き続ける理由 命があるから自粛もできる
新型コロナウイルスの影響でプロ野球の開幕が不透明な今年、広島OBで通算213勝を挙げたデイリースポーツ・ウェブ評論家の北別府学氏は、1月に成人T細胞白血病であることを告白し、闘病生活を送っている。現在は移植手術に備え自宅療養を続けている。入院中も公式ブログを随時更新。その理由や病を公表した理由、これまでの闘病生活について語ってもらった。
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闘病生活に入る前まで私は週2回、広島の地元テレビ情報番組にレギュラー出演していました。2月になるとキャンプ取材もあり、突然画面から消えると様々なうわさが広がるのでは、という心配もありました。周囲の人にいらぬ想像や心配をさせることも嫌なので、病を公表することにしました。自分が想像していた以上に地上波、新聞、ネット上などで反響があり驚いたものの、公表して良かったと思っています。
治療は抗がん剤による化学療法と骨髄移植の一つで末梢血幹細胞の移植となります。人によっては強い副作用があるといいますが、私はこれまでの治療で熱が何度か出た程度で、幸い吐き気などの強い副作用はありませんでしたが、これには担当医の先生にも驚異の体力と驚かれました。ただ、これから移植をして抗がん剤の副作用以上にきつい可能性もあると聞いています。
4月中旬には、私のドナーになってくれた次男が末梢血幹細胞採取をしてくれました。移植にはヒト白血球抗原(HLA)が100%一致しないといけないと思っていましたが、拒絶反応を抑える治療法が2008年に確立されて息子がドナーになることもできるようになりました。
私には2人の息子がおり、2人とも検査を受けてくれ、次男の方が適合しているということでドナーになってくれました。本来は次男の横で移植していく予定でしたが、新型コロナ騒動で移植が1カ月延びてしまい採取された末梢血幹細胞は冷凍保存されています。この時期、ドナーが他人だったら移植自体がストップしていたかもしれないとも担当医から言われました。
今回、大病をして家族のありがたさを痛感しています。入院中、毎日病院に通ってくれる女房に成人した3人の子ども。正直に言いますと、現役時代は家族が中心ではありませんでした。野球がうまくいけばいい。それだけを考えていましたから。
入院してからも2011年に開設したブログも体調が良い限りは更新しようと思っています。病気のことも含めて発信する場がある事を幸せに思っています。現役時代はファンの方々と触れ合う機会もあまりありませんでしたからコメントなどで皆さんの声も聞けますしまた、自分の考えを文章にするという事が生きる糧にもなっています。
本来なら野球シーズンまっさかりのはずが、今年は新型コロナウイルスの影響で今もプロ野球が開幕していません。プロ野球もなかなか開幕できないという寂しさを何とか少しでも埋めていきたい。カープファンや野球ファン、私を応援してくれる人に向けて、暗い話が多い世の中なので、近況報告を兼ねてなるべく明るいネタを探して書いています。女房をはじめ家族のネタも多いですが、感謝をなかなか口で伝えることができないので、ブログの中に表しているのもあります。
ブログのコメント欄にファンの方から「この病気に勝てば214勝ですね」と書いていただきました。私もそこを目指して頑張っていこうと思っています。
最後に先日、新型コロナウイルス感染で私より1つ年上の岡江久美子さんが亡くなられ驚きました。志村けんさんも入院してあっという間でした。軽症という人もいますが、急に重症となるとも聞きます。私の病にウイルス性の感染は一発アウトだと言われています。今回の新型コロナウイルス騒動はまるで映画の世界にも見えます。
日本全国に緊急事態宣言が出ており、外出自粛要請も出ています。「オレだけは違うんだ」と考えが甘い方がいます。「オレだけはかからない」という人にスーパーマンでもかかるよと言いたいです。人から人へうつる病気で、他人にも迷惑がかかります。ゴールデンウイークがはじまりますが、大切な命を守る為に外出を控えようではありませんか。命があるからこそ自粛もできるのです。
◆北別府 学(きたべっぷ・まなぶ)1957年7月12日生まれ。62歳。鹿児島県出身。宮崎・都城農業高から75年度ドラフト1位で広島入団。78年から88年まで11年連続2桁勝利達成。82年に20勝。86年は18勝でリーグ優勝に貢献した。最多勝2回、最優秀防御率1回、最高勝率3回、MVP1回(86年)、沢村賞2回(82、86年)、ベストナイン2回(82、86年)、ゴールデングラブ1回(86年)、オールスター出場7回。通算515試合213勝141敗5セーブ、防御率3.67。94年に現役引退後、01~04年まで広島投手コーチを務めた。12年に野球殿堂入り。野球解説者として活躍する一方でブログやユーチューブでの情報発信や、高校野球コーチ、菜園管理など活動は多岐にわたる。