カープ育成の星!藤井黎来0封デビュー 大敗ガックリのファンに希望届けた
「広島1-9阪神」(8日、マツダスタジアム)
広島は引き分けを挟んでの連勝が4で止まり、今季の阪神戦負け越しが決まった。敗戦の中での収穫は、1軍初登板となった育成出身の3年目右腕・藤井黎来投手(21)だ。七回の1イニングを1安打無失点。最速146キロの直球を主体に投球を組み立て、プロ初奪三振も記録した。若手の活躍が目立つ中、また一人楽しみな若鯉がデビューを果たした。
3つ目のアウトを奪うと、藤井黎は柔和な笑みを浮かべながらベンチに戻った。ナインから出迎えられ、大きな一歩を踏み出したことに実感がこもる。初舞台を堂々と演じきり「うれしいです。緊張で、まわりの音は聞こえなかったけど、お客さんが入るのはいいですね」。1回1安打無失点1三振。上々のデビューを飾った。
0-9の七回から登板。育成出身の苦労人にとって、劣勢の試合展開など関係ない。先頭・梅野への初球は146キロの直球。見逃しでストライクを取ると、2球目はスライダーで空振り。5球目のフォークをうまく右前に運ばれたが、浮足立つことはない。
続く小幡には5球連続で直球勝負。ファウルで粘られながら、最後はカウント2-2から145キロの直球で見逃し三振。プロ初奪三振を記録した。西勇の犠打で2死二塁とされたが、ここまで3安打の近本を二ゴロに料理。「ゾーンで勝負できたけどボール先行でフォークが(甘く)入ったり。直していけたら」と反省も忘れない。
ウエスタン・リーグでは17試合に登板。防御率は驚異の0・76と出色の成績を残し、9月26日に支配下選手登録を勝ち取った。育成3年目の今季は「焦りもあったし、今年結果を出さないと、という気持ちだった」と常に危機感を抱きながら、逆境を力に変えた。
名前にちなんで、登場曲は米ロックバンド、デレク・アンド・ザ・ドミノスの「いとしのレイラ」。エリック・クラプトンの代表曲としても知られる名曲のイントロに乗って本拠地のマウンドへ登場。「色んな人から言われて」と選曲理由を明かした。
新たな一歩を刻んだ右腕に佐々岡監督は「あの場面で、無失点で抑えたことは自信にしてほしい。このまま結果を残していってほしい」と背中を押した。
プロ初奪三振の節目のボールは地元・秋田に帰省するオフに渡す予定。両親には1軍昇格の前日5日に「あした上がるから」と電話で報告し、「そこまで緊張せず頑張れ」とエールをもらったという。「このまま抑えて勝ちパターンで投げるのが目標です」と藤井黎。肌寒い秋風と対照的に、熱気のこもった20球の初陣。頼もしい新星が必死に残り試合を駆け抜けていく。