広島・田中広が泥んこ特守 河田ヘッドの“鬼ノック”に食らいついた
「広島春季キャンプ」(3日、沖縄)
広島の田中広輔内野手(31)が3日、全体練習後の特守で、堂林と共に河田ヘッドコーチの“鬼ノック”を受けた。練習着を泥だらけにしながら約30分、100球以上に食らいついた。若い頃を思い出しながら必死に追いかけた白球。選手会長を務める遊撃のレギュラーは、背中でもチームを引っ張っていく構えだ。
沖縄の太陽が西に傾き始めていた。歯を食いしばり、白球を追いかけたのは田中広だ。突如、河田ヘッドコーチがノッカーを務めて始まった“鬼ノック”。主力選手でも容赦はない。約30分、堂林と共に100球以上を受け続けた。
「気持ちのこもったノックを2人して受けられて、とても充実した特守になりました。疲れましたけど、良い練習でした」
通常は玉木内野守備走塁コーチがノックバットを握る。だが、この日のメンバーが田中広と堂林と知った河田ヘッドがノッカーを買って出た。前回在籍した16、17年、同コーチは外野守備走塁コーチだった。2人にノックを打つのは初めてだ。
捕球ミスをすれば3球のペナルティーが課せられた。田中広は同ヘッドの「何だ、何だその足運びは!」「どこを抜かれているんだ!」などの叱咤(しった)激励を力に変え懸命に食らいつく。左右の打球に体を投げ出して飛びついたのは30回以上。真っ白だった練習着は、あっという間に泥だけになった。
「若い頃、がむしゃらに追いかけていた気持ちになった」。苦しくても笑顔を絶やさず、堂林へ声を掛けながら受けたノックの雨。充実感があった。
選手会長であり、遊撃のレギュラーだ。今春は若手の手本になることも強く意識しながら臨んでいる。かつては40歳を過ぎた新井貴浩氏が日南の坂道を猛ダッシュ。特守でも汗を流し、後輩を刺激してきた。その姿を見てきたからこそ、田中広も自らがハードメニューをこなすことで、若手の闘争心に火を付けようとしている。
河田ヘッドも「新井とかやっていたよね。(田中広は)選手会長としてもプレーヤーとしても見本になる選手だ。率先してやってくれると、こっちもありがたい」と目尻を下げた。
個々のレベルアップがチーム力を押し上げる。田中広は「貪欲になってやる。やっぱり僕がやることで、若い子が感じてくれることもある」と前を見据えた。チームリーダーが妥協なき姿勢で若鯉を引っ張っていく。