広島ドラ1黒原 新人王の系譜を受け継ぐ 森下、栗林に続いてカープの未来切り開く
広島ドラフト1位の黒原拓未投手(22)=関学大=が新春インタビューに応じ、新年の誓いを立てた。先発とリリーフの両方をこなせる即戦力左腕はシーズン通して1軍に帯同し、新人王の獲得を目標に掲げた。一昨年の森下、昨年の栗林に続く「ドラ1投手・新人王」の系譜を受け継ぐ。
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-明けましておめでとうございます。いよいよプロでの生活がスタートします。改めて今の心境は。
「チームには林、小林と智弁和歌山の後輩が2人いて、ドラフト2位の森さんも大学時代から知っていた。カープは若い選手が多いと思うので、やりやすいイメージがある。とても楽しみだなと感じます」
-身が引き締まる思いもあるのでは。
「そうですね。頑張らないといけないなという気持ちです」
-どういう1年を過ごしたいか。
「まずは開幕1軍に入れるように頑張りたい。そして、後半に失速しないようにシーズンを通じて戦い抜ける体力もつけていきたいです。できれば、林と小林と一緒にグラウンドに立てたらなと思っています」
-投球スタイルは。
「積極的というか、相手に向かって強気に投げ込んでいけるのが強み。そこが一番のアピールポイント」
-先発へのこだわりは。
「今はそんなにない。起用していただけるならどこででも投げるつもりです」
-取りたいタイトルや数字的な目標は。
「やっぱり新人王ですね。まずはそこを目標にやっていけたらと思います」
-一昨年は森下、昨年は栗林とドラフト1位が活躍し、いずれも新人王を手にした。
「そこはあまり考えていないし、プレッシャーにもなっていません。考えてもこっちがしんどくなるだけなので。自分なりにやるしかないです」
-ライバルや負けたくない選手はいるか。
「誰というのは難しい。チームでいうとみんなそういう立場になってきます。厳しい世界なので、力がないと1軍の試合でも投げられない。(1軍の)枠は決まっているので、チームメートとはいえ、そこで争わないといけない。仲良くしていただければ、もちろんうれしいですが、野球の面ではみんながライバルです」
-話したい選手は。
「左でいうと床田さんですね。森浦さんも去年1年間、1軍で活躍しているし、同じ和歌山出身でもあるので、いろいろ話を聞いてみたいです」
-広島の街やファンの印象は。
「カープへの愛が強いですね。それだけチームも注目されていると思うので、自分も期待に応えられるような投球をしたい。そういう(注目度の高い)チームでやれるのはうれしく思います」
-どんな選手になっていきたい。
「活躍しても数年で終わったら意味がないので、体を大事にして長く活躍したい。将来的には先発ローテーションに入って安定した数字を残せるような投手になりたい」
野球以外の人生思いつかない
-子どもの頃からプロになりたかった?
「文集ではずっとプロ野球選手になりたいと書いてました。でも、その頃は具体的じゃなく、野球していたら野球選手やろみたいな感覚だったので」
-野球をしていなかったら何をしていた。
「たまに思うんですが、まともに生きられていたのかなって(笑)。野球やっている以外は思いつかない。仕事をしているイメージが見えない。野球をやってなかったとしても、たぶんスポーツ選手は目指していたと思いますが。ずっと野球一筋できました」
-いつから投手になったのか。
「ずっと投手は好きでやりたいと思っていたんですが、投手一本になったのは中3ぐらいですね。それまでは内野をやったりとかしていました」
-野手になる選択肢はなかったか。
「バッティングがだめだったので(笑)。自然とそうなったという感じです」
-プロを意識し始めたのは。
「高3ぐらいですかね。球速も144キロまで上がったし、強豪校相手に投げて、それなりに抑えられるようになってきたので。そこから大学で4年間頑張ってプロで指名されるような選手になれたらいいなという思いで関学に行きました」
-智弁和歌山での3年間が大きかった。
「そうですね。中学までは友達と楽しくやれればという感じだったが、レベルの高いところに入学して、今の自分の練習スタイルにもなっているんですが、黙々と練習をやるようになりました。高校から野球への取り組み方が変わり、しっかりとした土台ができた。関学に入る時は4年の時にプロ志望届を出すと決めていた」
-プロ入りへの夢を抱きながら入学。どういう4年間だったか。
「結果的にドラフトに指名されたが、しんどいことの方が多かったですし、悔しい思いもたくさんしました。それでも、その経験がプラスになったというか、自分が成長する糧になったと思う。今は関学に入って良かったなと思います」
-どのあたりがつらかった。
「結果が出なかったことですね。大学3年まではずっとBクラスで最下位も1回なりました(2年秋)。個人的にも数字を残せていなかった」
-しかし、4年春は5勝1敗、防御率0・70と圧倒的な成績を残し、MVP、最優秀投手、ベストナインの3冠に輝き、8年ぶりの優勝に貢献した。
「それまで散々負けていたので悔しさは人一倍感じていたし、その中で負けたくないという気持ちもより強くなっていった。負けん気とか泥くささみたいのが最後になって報われたんじゃないかなと思います。それが優勝にもつながった」
-好投できた要因はどこにあるのか。
「カットボールを覚えて変化球の球種が増えたことが一番大きい。それと制球力が良くなりました。といっても、今もそんなに良くはないんですけど、大学時代はもっとひどかったので(笑)。四球が多くて、そこで失点を重ねていたが、それが減ったのが4年の春の優勝につながったと思います」
-カットボールはどうやって習得した?
「結構、自己流でしたね。真っすぐに近い球の方が投げやすいんですよ。誰かを参考にしたとかはなく、自分のイメージでやりました。3年から練習はしていたけど、本格的にマスターしようと取り組んだのが4年になってからです」
-関学の恩師である本荘監督の言葉も支えになったそうだが。
「そうですね。『勝てる投手になろう』というのはずっと言われてきて、最後にそれが実現できたのは良かったです」
-自分の性格についてはどう思うか。
「マイペースです。結構、自分のリズムでやったりする。いいことか悪いことか分からないが、周りに合わせないところはある。多分悪いところだと思いますが(笑)」
-直したい?
「直したいとは思いますね。いいときはいいんですが、もっと臨機応変にできればと思うときもあるので。ただ、あまり深く考え過ぎるタイプではないので、そこがプラスになっている部分はあると思います」
-憧れの投手は。
「いっぱいいますけど、1人選ぶならドラゴンズの岡田さん(智弁和歌山の先輩)。高校時代から見ていました。直球にキレがあって質もいい。みんなが憧れる球なんじゃないかなと思います」
-改めて今年に懸ける意気込みを。
「とにかくチームの力になれればという気持ちでいます。先発でも中継ぎでも全力でやって貢献したいと思っています」
-名前の由来は。
「未来を自分の手で切り開くという意味で拓未です。両親がつけてくれました」
-好きな言葉は。
「ど根性です。走るの嫌いですし、体力には自信がない(笑)。それでもどうしてここまで来れたのかなと振り返ったら、根性しかないなと思った。今はその言葉を大切にしてます」
-趣味は。
「お笑いを見ること。漫才やコントが好きです。好きな芸人はジャルジャル」
-好きなバンドは。
「ONE OK ROCKをよく聞きます」
-チャームポイントは。
「八重歯です。でも、注目されると笑いにくくなるので、ほどほどに見てもらえればと思います」(笑)
-地元和歌山でお気に入りの場所は。
「実家の近くに浜の宮ビーチという海水浴場があって、地元にいる時は、そこをよく走っていました。走った後は休憩しながら海を見渡したりして。その景色が好きで、思い出深い場所ですね」
-広島でやりたいことは。
「お好み焼きを食べたい。おいしいものを食べている時が一番幸せ。いろいろお店を教えてもらって行きたいです」
◆黒原拓未(くろはら・たくみ)1999年11月29日生まれ。和歌山県海南市出身。173センチ、77キロ。左投げ左打ち。小1から野球を始め、海南中では野球部に所属。智弁和歌山では1年秋からベンチ入りし、2年からエース。3年夏に甲子園に出場した(2回戦敗退)。関学大では1年春からリーグ戦に出場し、通算13勝を挙げる。最速151キロ。変化球はカットボール、ツーシーム、スライダー、チェンジアップ、スプリット。21年度ドラフトで広島から1位指名を受け、契約金1億円、年俸1500万円で入団(金額は推定)。背番号24。