「僕らのころ」と今の選手たち 先発投手の理想と現実 4年連続カープBクラスの原因を検証

 4年連続Bクラスに終わったカープ。開幕ダッシュで期待感は高まったが、終わってみれば5位。就任3年目の佐々岡真司監督(55)は低迷の責任を取って辞任した。失速の原因は何だったのか?来季、浮上に必要なものは?デイリースポーツ取材班と評論家陣が全5回で検証する。今回は第2回。

  ◇  ◇

 佐々岡監督はいらだっていた。報道陣から毎試合のように先発投手の交代時期について質問が飛んでいた。

 「なんでそんなことを聞くのか?あのくらい僕らのころは普通。投げられるよ」

 例えば、4月22日・DeNA戦で大瀬良は中5日で先発し、8回1/3で135球を投げた。シーズン序盤、佐々岡監督は先発を引っ張る傾向があった。球界で主流となっている先発投手は100球前後で交代。カープに関しては、120球前後が目安となっていた。

 シーズンを前に指揮官は投手スタッフを見渡し、方針を決めた。エース大瀬良、森下、九里の3本柱に床田もメドがつき強力な先発ローテーションを形成した。一方でリリーフは守護神・栗林の前を任せられるセットアッパーを見つけられなかった。そこで、先発投手になるべく長いイニングを投げてもらい、できることなら直接、抑えにつなぐ。これを投手起用の方針とした。

 戦力を分析し、それに合った起用法を確立する。ここに問題はない。だが、そこまでの準備が果たしてできていただろうか。

 春季キャンプ中、評論家たちのつぶやきを聞いた。

 「もう、ブルペン終わりか?投げないよなあ」

 九里のように1日で200球を投げる投手の方が珍しくなった。これも球界の主流となりつつある。球数を投げて体をつくる、フォームを固めるという方法から、ブルペンでの投球は最小限にして、肩肘の負担を軽減。ほかのトレーニングで補う。

 つまり選手たちは100球を投げるための準備を行い、首脳陣は120球を投げることを強いた。結果3、4月は6回以上自責点3以下のクオリティースタート(QS)が29試合中22試合、76%を記録したが、長く引っ張った疲労の蓄積もあり、9月は19試合中5試合、26%と大きくその確率を減らした。

 現役時代に先発100勝、100セーブを達成し、シーズン240回を投げたこともある経験からすれば、120球くらい投げるのは当たり前かもしれない。だが、「僕らのころ」と言った指揮官と、今の選手たちの考えは乖離(かいり)していた。

 指揮官が思い描く理想と現実のギャップは先発陣の疲弊という無残な姿で表れていった。(デイリースポーツ取材班)

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