長野久義らしく 涙の広島→巨人無償トレード 球団“親心”にも感謝「楽しみな対戦になります」
広島と巨人の両球団は2日、長野久義外野手(37)の巨人への移籍が合意に達したことを発表した。交換要員や金銭が発生しない無償トレードとなる。長野は2019年に、広島から巨人へFA移籍した丸の人的補償として広島に移籍し、4年間プレーした。発表後に、マツダスタジアムで報道陣に対応した際には、ファンからの思いに感謝を示し、涙を流した。
広島ファンへの思いを問われたときだった。長野は「由宇にまで応援に来てくださった方もいらっしゃったので…」と話すと言葉を詰まらせた。数十秒、続いた沈黙。込み上げる感情を抑え切れず、涙がこぼれた。
「まさか泣くとは思わなかったので、ちょっとごめんなさい。本当にここ(マツダスタジアム)だったり東京ドームで受けた声援を忘れません」。広島で過ごした4年間。感謝の思いがあふれた。
巨人へFA移籍した丸の人的補償として、2019年に広島に移籍。「最初の不安は一から人間関係を構築することだった。気がつけば倍の信頼できる仲間たちができたことが一番良かった」と振り返る。細かな気配りもできる温かい人柄。自身の不安とは対照的に、厚い人望ですぐにチームに溶け込んだ。
思い出に残るのは「一番最初の試合ですかね」。カープデビュー戦となった19年3月31日の巨人戦。七回の守備から出場し、直後の打席で中前打を放った。地鳴りのような歓声。忘れることはない。
電撃的に発表された、5シーズンぶりの古巣復帰。鈴木球団本部長は「いつかユニホームを脱ぐことがあるとすれば、巨人で脱ぐべきじゃないかというのはずっと思っていた」と経緯を明かした。
今季は58試合と、出場機会は減っていたが「今なら体も技術的にもまだ来年も働ける」と考えた。環境が変われば再び輝けるとの“親心”で、今夏頃から移籍を模索し巨人サイドに打診。この日までに合意に至った。
無償トレードだったのは「彼の野球人生を考えてのこと」。トレードが成立しなかった場合でも、球団は来季の戦力として契約を結ぶ方針だった。長野は「球団間で話し合っていただいて、僕の将来のことを考えていただいた結果だと思います」と感謝した。
来季の広島は新井新監督の下で5年ぶりのリーグ制覇を目指す。巨人も20年以来の覇権を狙う。「楽しみな対戦になりますし、またマツダスタジアムに戻ってこられるようにしっかりと頑張りたい。カープとジャイアンツと、優勝争いできるように頑張りたい」。涙を拭い、前を向いた長野は力強く決意表明した。
◇長野 久義(ちょうの・ひさよし)1984年12月6日生まれ、37歳。佐賀県出身。180センチ、85キロ。右投げ右打ち。外野手。筑陽学園から日大、ホンダを経て、2009年度ドラフト1位で巨人入団。10年3月26日・ヤクルト戦(東京ドーム)でプロ初出場。首位打者(11年)、最多安打(12年)、新人王(10年)、ベストナイン・ゴールデングラブ賞各3回(いずれも11~13年)。13年WBC日本代表。