広島・栗林 もがき苦しむ背中押した鈴木誠也の言葉で「足を上げて投げるぞ」 新フォームで三者凡退
もがき苦しむ広島・栗林良吏投手(26)がようやく見つけた光明。それは左足を高く上げる新フォームだった。ここまで1勝6敗7セーブ、防御率7・02。プロ3年目、“失敗しない男”と言われた過去2年とは別人のような成績。試行錯誤の中で背中を押してくれたのは海の向こうからの声だった。
栗林は最後の打者を打ち取るとガッツポーズ。マウンドから一塁ベンチへ駆け降りていった。躍動する姿に喜びがあふれた。
6月17日の西武戦。八回からマウンドに上がるとわずか8球で三者凡退に打ち取った。三者凡退は4月22日・DeNA戦以来、今季4度目だった。
「フォームを変えた1日目に結果が出て良かった」
左足を高く上げて、一度力をためてから投げ込む新フォーム。これまでのクイック投法から大きな変更を決断した。ルーキー時も同様に足を上げていたが違うという。
「1年目に戻すのではなく、自分の中では新しいフォームに挑戦しているつもりです」
“新しい”にこだわる。そこにはカブス・鈴木誠也の存在があった。
「誠也さんから連絡もらって、“いいときに戻そうと思うだろうけど、戻ったとしても相手はさらに上に行ってることもある。新しいものを求める方がいいよ”と言ってもらったんです」
抑えていた頃のフォームに戻す。過去の栄光という幻影を追い求めても見つかるかどうかは分からない。たとえ見つかったとしても、それが今、通用する保証もない。ならば、新しい自分を探すべく、前進してみたらどうか。
先輩の言葉に背中を押された。10日・ロッテ戦でサヨナラ負け。翌日から“新フォーム”に取り組み始めた。通常、リリーフ投手の試合前練習のグラウンド滞在時間は短い。が、栗林は連日、練習時間いっぱいを使って足を上げるフォームに取り組んだ。
それでも「不安はあります。試してみたい気持ちはありますけど、チームの勝敗が懸かっている。失敗は許されないので」と踏ん切りがつかなった。そのまま15日・楽天戦で投げて打たれた。腹を決めた。
「絶対に足を上げて投げるぞ」
そして、西武戦での1回無失点。最後の打者・古市は宝刀フォークではなく、カットボールで空振り三振。“ニュー栗林”が誕生した。
もう振り返ることはない。栗林は堂々と胸を張って前へ進んでいく。