広島 田中広輔を蘇らせた新井監督の言葉「どのアウトも一緒」 思考法を変え初球打率・471の好結果に
広島はシーズン前の低評価を覆す戦いぶりで、前半戦を終えて2位と躍進した。そこには新井監督就任によって成長を遂げた選手たちの存在があった。番記者が聞いた、彼らを変えた“魔法の言葉”を2回にわたって紹介する。第2回は野手編。打撃で輝きを取り戻した田中広輔内野手(34)を変えた言葉を取り上げる。
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田中は前半戦で5本の本塁打を放った。数自体は多くないが、試合の流れを変えた一発が目立った。中でも4月16日・ヤクルト戦は六回2死満塁で同点の満塁弾。新井監督の「血が沸騰するようなホームランでしたね」という言葉が、興奮度を物語っていた。
昨季はプロ9年目で最少の41試合の出場。オフの契約更改では球団史上最大の1億2000万円ダウンでサインした。昨季までの不振を全く感じさせない活躍の裏には、新井監督からのシンプルな言葉があった。「『どのアウトも一緒だから。いろんなことを考えず、やってくれ』とは言われています」。
ゴロアウト、フライアウト、三振。どんな形で凡退しても気にしなくていい。指揮官は「ウイークポイントを気にして彼の良さがなくなるのではなく、彼のいいところをどんどん生かして、というつもりで言っている」と意図を説明する。
そう背中を押され、今季の初球打率は・471で1ボールからは・333。初球打ち、1ボールから本塁打を2本ずつ放っており、早い仕掛けが好結果につながっている。
「今年は自分の中でいろんなモノを少し楽にしてあげている」と田中は思考法を変えたと明かす。具体的には「自分の打撃、言ったら自分勝手に(打撃を)したい。今まではいろんな制限を自分でかけて苦しめていて。ただ、それはチームが勝つための1番としての僕の仕事だった。自分のために、自分の結果を出すために、というのが今です」。
3連覇時のリードオフマン。その役割は多岐にわたった。今季は自身に対し、必要以上に重圧をかけない。目の前の勝負に全てを集中する。そして指揮官の言葉が“重荷”を解き放ってくれた。その結果、持ち味の積極性が武器になった。
「3割打てば一流と言われるスポーツ。(早いカウントで)打てば勢いも付く。そこで結果を出せるように、常にしっかり振る練習もしている」と田中。34歳をよみがえらせた大きなひと言。そこには失敗を恐れず積極的な姿勢で選手の長所を伸ばす、“新井イズム”が凝縮されていた。