広島・黒原拓未 プロ3年目の初勝利も「相手方にも迷惑をかけている」 死球で批判、危険球退場-紆余曲折を経た21年度ドラ1
「DeNA6-9広島」(25日、横浜スタジアム)
広島・黒原拓未投手(24)がプロ3年目で初勝利をつかんだ。同点の延長十一回を無失点で抑えると、直後のイニングに味方が勝ち越しに成功して白星が舞い込んだ。新人時代から紆余(うよ)曲折を経験した21年度のドラ1左腕がようやくスタートラインに立った。チームも2試合連続の延長戦を制し、貯金を今季最多タイの4に増やした。
ベンチの最前列で、プロ初勝利の瞬間を見届けた。黒原は手をたたきながら、勝者の列に加わる。左翼スタンドからの大歓声と、まばゆいフラッシュを受けたヒーロー。紆余曲折を経た3年間を振り返り「(ここまで)長く感じました。チームが勝ったのはうれしく思います」と実感を込めた。
出番は同点の延長十一回から。先頭・森敬には150キロ直球で空振り三振を奪い、続く佐野を左飛に仕留める。2死から関根に死球を与えるも、続く柴田を中飛。直後のイニングで攻撃陣が奮起して、自身に勝利の女神がほほ笑んだ。
ヒーローインタビューでは「相手方にも迷惑をかけているので」と関根への死球に言及。3連投も「連投は学生時代にも経験がある。その辺はあまり気にならないというか」と意に介さず、勝利への執念を燃やした。
入団以降は苦しい時期が長く続いた。新人だった22年5月には、左肩甲骨付近に死球を当てた巨人・吉川が担架で退場。結果的に肩甲骨の骨挫傷で登録抹消となり、ネット上で批判を受けた。昨季は3試合で先発も、結果を出せなかった。今季は森下の代役として3月30日・開幕2戦目に先発も、先頭・度会への投球がヘルメットの耳当て部分に直撃し、わずか3球で危険球退場となった。
この日は、その時と同じ横浜スタジアム。「ここからプロ野球生活を続けていく中、何度もいいことも悪いこともあると思う。特に中継ぎは打たれた次の日も試合。ずっと引きずるのは次の試合のパフォーマンスにも影響してくる。嫌でも明日はやってくるので」。1軍に帯同する中、切り替えの大切さを感じた。
危険球退場に際しては新井監督やチームメートから背中を押され「気にしても先はない。元気づけられて、次の日から練習に入れた」。喜び、苦しみ、悔しさ。味わった全ての経験と向き合いながら懸命に前へ進んだ。そんな月日が黒原をたくましく成長させた。
母校・関学大は6季ぶりに関西学生野球春季リーグを制覇。6月の全日本大学選手権に向けて寄付を行うそうで「防球ネットとボールを入れるケースが欲しいと言われたので、それを」と後輩思いの一面ものぞかせた。
新井監督は「今日はスタートだと思って、また頑張ってもらいたい」と拍手を送った。「強気で腕を振って、とにかく相手に気持ちで負けないように投げていきたい」と黒原。ようやく手にした始まりの1勝。これからも変わらず、強い気持ちで輝く未来を切り開く。
◇黒原 拓未(くろはら・たくみ)1999年11月29日生まれ、24歳。和歌山県出身。173センチ、78キロ。左投げ左打ち、投手。智弁和歌山、関学大を経て21年度ドラフト1位で広島入団。プロ初登板は22年3月29日・阪神戦(中継)。24年は先発でスタートも2戦2敗。以降、リリーフで好投を続けた。