混沌とする広島の正捕手争い 珍しい3人による巴戦?岡義朗氏「いい競争になっている」
「広島4-3ヤクルト」(27日、マツダスタジアム)
1点リードされた広島は九回2死一、二塁から坂倉が左翼へ二塁打を放って逆転サヨナラ勝ちした。先発マスクを競争相手の石原に譲った男の意地の一撃。デイリースポーツ評論家の岡義朗氏は「同じ捕手としていいライバル関係を築いている」と語り、ベテランの会沢を含む3捕手による競争効果に触れた。
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最後に逆転打を放った坂倉はもちろんこの試合のヒーローだが、13球粘った末に田口から四球を選び、後ろへつないだ石原にも強い執念を感じた。捕手として先発した試合だけに、絶対に負けたくないという気持ちが九回の打席に出ていたように思う。
(2-3で迎えた九回裏、広島は先頭の上本が右前打で出塁。2死二塁から石原が四球。直後に坂倉が左翼へはじき返し、山崎のダイビングキャッチが不発に終わる中、一気に2者が生還した)
石原の打撃は非常に対応能力が高く、打てる雰囲気を持っている。あの打席は追い込まれてからも速球と変化球に、しっかり反応していた。
ファウルが合計9球。3-2からは5球連続。田口が投げることろを探すのに苦労するほどだった。この粘りに根負けしたのだろう。坂倉を迎えたことろで“13球”のダメージは明らかだった。
マスクをかぶってアドゥワをリードしながら七回に引っくり返され、よほど悔しかったに違いない。うまく緩急を使い、好投を導いていただけにね。その気持ちが四球に表れていたように思う。
逆に先発マスクを石原に譲った坂倉からは、目の前のライバルに対する意地を感じた。
坂倉には捕手に専念したいとの希望があり、新井監督も昨シーズンは捕手一本の方針で起用していた。しかし、定位置を確保するまでには至っていないのが実情だ。
肩(送球)の問題や配球の勉強など課題は残ったまま。結局は打力を生かすため、再び一塁を守るケースが増えている。これもチーム事情だから仕方がないけどね。
広島は攻撃面に物足りなさはあるものの、抜群の投手力でここまできている。昨年、夏場に10連勝して7月下旬には一度、首位に立った。若いチームで最終的には2位に終わったが、力は確実に上がってきている。
今年はもう何日も首位に立ち続けている。そんな中で、会沢を軸にした捕手争いは石原も加わって熾烈になってきた。
この日のサヨナラ勝利はチームにとって大きな1勝になったが、捕手同士の成長と期待という点では、それ以上に価値のある1勝になったのではないか。
石原が四球を奪って坂倉が打つ。ライバル同士の2人が演じた逆転サヨナラのシーンは見ていて鳥肌が立ったね。