来季、新井カープに必要なのは厳しさか 名伯楽・内田順三氏の視点 選手が最も恐怖を感じることとは-

 広島が4位でシーズンを終えた。首位で突入した9月は、まさかの5勝20敗。失速の要因にはさまざまな声が挙がり、選手を一切批判しない新井監督の指導スタイルにまで批判が及んだ。来季、3年目の新井カープに必要なのは厳しさか。現役時代に新井監督も指導した打撃の名伯楽、内田順三氏(デイリースポーツ・ウェブ評論家)が古巣カープを語る。

  ◇  ◇

 新井監督は1年目から選手ファーストを貫いてきた。選手の失敗を責めない、これはアメリカでもそういうスタイルを取ることが多い。新井監督がチームを家族と表現していたように、カープはすごく家庭的な球団だからね。8月まではうまくいっていたわけだから、決して間違いではないよね。

 9月の戦いを振り返れば、得点力不足が投手に負担をかけてしまったね。シーズンを通してクリーンアップを固定できなかったが、その弱さがもろに出てしまった。矢野を3番にしたり小園、野間を4番にしたりした試合もあった。矢野は素晴らしい選手だが、本来は3番を打つようなタイプではない。ベンチも試行錯誤していたが、最後はチーム全体に焦りも出てしまったね。

 くふうハヤテを指導しているので2軍でカープの選手も見ることがあるが、野手にいい選手は多いがすごい選手がいないよね。巨人なら岡本、ヤクルトなら村上、DeNAにはオースティン、阪神も中軸がいい。すごい選手というのは作るのが難しくて、今のカープなら末包のような選手が2、3人いて切磋琢磨するのが理想。最終戦に出てきた田村や内田、仲田もいい選手で伸びしろがあるが、まだ粗削りだよね。以前いたエルドレッドのような長距離砲がいたら一発で雰囲気も変えられるが、今年は外国人もうまくいかなかった。

 先にも述べたように、すごい選手を作るのは本当に難しい。今のカープの話とは別にして、選手を育てる上で、やはり厳しい指導というのは必要だよ。今はちょっとのことでコンプライアンスに引っかかるが、臆病な指導、守りに入ったコーチングでは選手は育たない。いろいろな指導者、10人以上の監督とも接してきたが、選手に対して『お前をうまくしたい』という思いは相手に伝わる。

 時にはピリピリとした雰囲気を作ることも大事だ。巨人では、今の阿部監督がルーキーの時にコーチをしていたが、1軍でレギュラーだからと言って、私情は入れず特別扱いはしなかった。演技をすることもあったね。ミーティングで「キヨ(清原和博)、あの一塁への走りではダメだ。もっと全力でいかないと」と、あえて言ったこともある。そうすると、他の選手、若手が抜くことはできないからね。

 そして、選手が最も怖いのはファームに落とされること。プロはアマチュアと違うからね。気持ち良くやるばかりではなく、プレッシャーを感じながらやらないといけない。そこをうまく、コーチがフォローしながらやっていけるかも、選手が育っていくには必要なことだね。あの時、『内田さんがああいう風にしてくれたから』とか、『ああいう言葉をかけてくれたから今がある』と言われるのが一番コーチ冥利に尽きるね。

 新井監督は最終戦後の挨拶で、「来季は変化する年になる」と語っていたね。彼の性格も良く知っているが、責任を感じ、悔しい思いを抱えていると思う。9月、歯止めが効かなかった原因は何か。チームをどう変えていくか。今は、課題や問題点と向き合っているだろうね。

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