阪神の元名物オーナー久万氏、不振当時の中村勝広監督に「スカタン」
【2011年9月14日付デイリースポーツ記事より】
阪神の元オーナーで、阪神電気鉄道元会長の久万俊二郎氏が9日、老衰のため神戸市の甲南病院で亡くなっていたことを阪神球団が13日に発表した。90歳。葬儀・告別式は既に執り行われ、後日お別れの会が催される。虎の総帥として唯一日本一を経験した久万氏は、歯に衣着せぬ物言いや、星野仙一氏(現楽天監督)、野村克也氏といった大物監督を外部招へいし、名物オーナーとして知られた。巨人の渡辺恒雄球団会長(85)はこの日、盟友の死を悼んだ。
21年の長期にわたるオーナー生活で天国も地獄も味わった名物オーナーが逝った。久万氏は東大法学部を卒業後、海軍を経て1946年に阪神電鉄に入社。84年に阪神球団のオーナーになった。翌85年にチームは吉田義男監督の下、西武との日本シリーズを制し、久万氏は猛虎の歴史で唯一の“日本一オーナー”となった。
歯に衣(きぬ)着せぬ発言は“久万節”とも呼ばれた。87年3月に酒気帯び運転で逮捕された主砲・掛布に対し、安全第一の電鉄会社の立場から「大ばか野郎」「欠陥商品」と厳しく断じた。
強力打線を誇った85年の優勝後、チームは万年Bクラスに低迷。95年7月には不振のチームに怒り、当時の中村勝広監督に対して「スカタン」と発言して話題になった。
球団経営にも手腕を発揮し、野村氏、星野氏とOB以外から大物監督を招へいした。02年に星野氏が就任すると、翌03年にチームはリーグ優勝。そこから優勝争いの常連へと成長を遂げた。
2004年に明治大の一場靖弘投手(現ヤクルト)に対するスカウト活動での金銭授与問題の責任を取り、21年にわたるオーナー職から退いた。同時にオーナー職を辞した巨人の渡辺会長はこの日、都内で取材に応じ、盟友の死に無念の表情を見せた。
「俺と久万さんが元気なら何事も起こらん。野球界が整然としていたんだよ。それで一場事件で、俺が辞めるだけで済むと思ったら、久万さんも一緒に辞めちゃった。あれ以来、野球界は無政府状態なんだ」
宿命のライバルは、プロ野球をめぐる問題にともに対峙(たいじ)する戦友でもあった。
「俺と久万さんは一心同体だったから、俺は久万さんが亡くなっちゃったらやる気ねぇや。プロ野球界に対して情熱失っちゃったよ。俺と久万さんの時代が、俺にとっちゃ最高の時代だった。何でも話をしたし、彼は何でも意見を言ったよ。もちろん反論も含めて。あんな率直ないい人はいなかった」と故人の人柄をしのんだ。 愛する猛虎の今季ペナントレースを見届けることなく天国へ旅立った久万氏。4連敗で首位ヤクルトと8差となった猛虎ナインを、今も厳しい目で見守っているに違いない。
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阪神の元オーナーで、阪神電気鉄道元会長の久万俊二郎氏が9日、老衰のため神戸市の甲南病院で亡くなっていたことを阪神球団が13日に発表した。90歳。葬儀・告別式は既に執り行われ、後日お別れの会が催される。虎の総帥として唯一日本一を経験した久万氏は、歯に衣着せぬ物言いや、星野仙一氏(現楽天監督)、野村克也氏といった大物監督を外部招へいし、名物オーナーとして知られた。巨人の渡辺恒雄球団会長(85)はこの日、盟友の死を悼んだ。
21年の長期にわたるオーナー生活で天国も地獄も味わった名物オーナーが逝った。久万氏は東大法学部を卒業後、海軍を経て1946年に阪神電鉄に入社。84年に阪神球団のオーナーになった。翌85年にチームは吉田義男監督の下、西武との日本シリーズを制し、久万氏は猛虎の歴史で唯一の“日本一オーナー”となった。
歯に衣(きぬ)着せぬ発言は“久万節”とも呼ばれた。87年3月に酒気帯び運転で逮捕された主砲・掛布に対し、安全第一の電鉄会社の立場から「大ばか野郎」「欠陥商品」と厳しく断じた。
強力打線を誇った85年の優勝後、チームは万年Bクラスに低迷。95年7月には不振のチームに怒り、当時の中村勝広監督に対して「スカタン」と発言して話題になった。
球団経営にも手腕を発揮し、野村氏、星野氏とOB以外から大物監督を招へいした。02年に星野氏が就任すると、翌03年にチームはリーグ優勝。そこから優勝争いの常連へと成長を遂げた。
2004年に明治大の一場靖弘投手(現ヤクルト)に対するスカウト活動での金銭授与問題の責任を取り、21年にわたるオーナー職から退いた。同時にオーナー職を辞した巨人の渡辺会長はこの日、都内で取材に応じ、盟友の死に無念の表情を見せた。
「俺と久万さんが元気なら何事も起こらん。野球界が整然としていたんだよ。それで一場事件で、俺が辞めるだけで済むと思ったら、久万さんも一緒に辞めちゃった。あれ以来、野球界は無政府状態なんだ」
宿命のライバルは、プロ野球をめぐる問題にともに対峙(たいじ)する戦友でもあった。
「俺と久万さんは一心同体だったから、俺は久万さんが亡くなっちゃったらやる気ねぇや。プロ野球界に対して情熱失っちゃったよ。俺と久万さんの時代が、俺にとっちゃ最高の時代だった。何でも話をしたし、彼は何でも意見を言ったよ。もちろん反論も含めて。あんな率直ないい人はいなかった」と故人の人柄をしのんだ。 愛する猛虎の今季ペナントレースを見届けることなく天国へ旅立った久万氏。4連敗で首位ヤクルトと8差となった猛虎ナインを、今も厳しい目で見守っているに違いない。