【球数制限を考える6】強豪校を変えた中田翔の故障

 「高校野球 焦点・球数制限を考える・6」

 ここ10年で4度の甲子園制覇を果たした大阪桐蔭。全国屈指の強豪を率い、数々のプロ野球選手を輩出した西谷浩一監督(47)が指導の現場から肩肘問題を語る。大切にしているのは練習後のクールダウン。それはある選手の故障が転機となっていた。

 寮生活で豊富な練習量を誇る大阪桐蔭。7年連続でプロ野球選手を送り出した西谷監督は、投手の肩肘に関してどう考えているのか-。

 「これは投手だけに限らず、野手に関しても投げることは考えないといけない。選手の将来がある中で強くするのがテーマ。中学野球で言うと、ボーイズやシニアはだいたい土日だけ。これが高校に入っていきなり1週間、ずっとボールを投げ続けるのは無理がある。そこにシャドー(ピッチング)や、ボールを投げないノックを入れる。入部して4、5月はまず体を慣れさせることを考える。野手でも必ずノースローの日を作るようにしている」

 入部直後の新入生はまず、校舎から生駒山山頂付近にあるグラウンドまで山登りから始まる。高校野球に必要な体力、下半身の力を養うと同時に、ある講習を受けている。

 「理学療法士の方にインナーマッスルとは何か、トレーニングの正しいやり方など勉強会を開いてもらっている。ただ大きい筋肉をつければいいわけではない。ウエートトレーニングは『上よりも下、前よりも後ろ』と言われるように、バランスよくやっていかないといけない。しなやかで鋭い体が理想。クールダウン、食事も含めて最初にそういう意識を持たせるようにしている」

 しなやかで鋭い体-。西谷監督の転機は、1人の選手がもたらした。1年夏から甲子園で結果を残した中田翔(現日本ハム)。高校時代に右肘を故障した際、ドクターからクールダウンを重視するよう勧められた。

 「ちょうど10年前くらいですかね。いろんな方に話を聞いて指導法を模索していた。どの指導者の方もそうだと思うんですが、残り1時間あったらノックなど技術練習を入れたい。そしてクールダウンは各自でやる。中田が故障した時に、病院の先生から『肩甲骨が硬すぎる』と言われて、『クールダウンはどれくらいやっている?』と聞かれた。当時はすごくいい加減で、先生からもきつく言われて…。そこから何とか練習の終わりに45分間、クールダウンの時間が取れないかと考えた。単なるダウンではなく、筋肉、関節を柔らかくする意味で。なかなかそこには目が行かなかった。残り1時間あったら、もうワンメニューと思いたくなる。でもその時間はすごく大切でした」

 指導者なら誰もが持つ技術指導への欲求-。そこを選手のために我慢したことで変化が生まれた。さらにもう一つ、大阪桐蔭が採っている障害予防システムとは?(続く)

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