【夏の選手権100回大会企画10】群馬の高校野球
群馬県勢は、戦前から全国制覇にあと一歩、届いていなかった。壁を破ったのは、桐生第一だった。創部15年目、4回目の出場となった1999年の第81回大会。左腕エース・正田樹(元日本ハムなど)が、大車輪の活躍を見せた。
1回戦で大会屈指の右腕と呼ばれた比叡山・村西哲幸(元横浜)と投げ合い、七回途中までパーフェクト。1安打12三振で初戦突破へ導いた。その後もキレのある直球と、落差の大きいカーブを武器に3完封。3回戦からは4連投する大車輪の活躍で、頂点へ導いた。
2013年の第95回大会では、初出場の前橋育英が快進撃を見せた。エース・高橋光成(西武)が1回戦・岩国商で、大会記録にあと1と迫る9者連続三振を奪った。
準々決勝・常総学院戦では九回2死から2点差を追い付いて、延長十回にサヨナラ勝ち。劇的な試合で勝ち上がり、初出場初優勝を成し遂げた。
全国制覇は果たせていないが、桐生、高崎商、前橋工も群馬の高校野球を盛り上げてきた。
桐生は桐生中時代の36年の第22回大会で、群馬県勢として初の4強へ進出した。
78年の第60回大会は、エース・木暮洋、4番・阿久沢毅を中心にセンバツ4強。夏の第60回大会でも活躍が期待されたが、2回戦で県岐阜商に敗れた。
ただ、群馬県勢では夏の甲子園最多出場回数を誇る古豪は、この大会を最後に甲子園出場から遠ざかっている。
高崎商も38年の第24回大会で4強へ進出した実績を持つが、77年の第59回での1回戦突破を最後に、甲子園での勝利がない。
前橋工は70年代に台頭した。74年の第56回大会と、96年の第78回大会から2大会連続で準決勝へ進出している。
97年の第79回大会の準々決勝では、敦賀気比にサヨナラ勝ち。延長十回1死二塁で捕ゴロが一塁へ送球される間に、二塁走者・滝沢真澄が一気に本塁へ生還。土壇場での好走塁で準決勝へ進んだ。
前橋商、東農大二なども存在感を見せてきたが、2010年代に入ると流れが変わった。前橋育英と、2002年創部の高崎健康福祉大高崎の“私学2強時代に突入。高崎健康福祉大高崎は「機動破壊」をモットーとし、14年の第96回大会では4試合で26盗塁を決めて8強へ進出。走力に重点を置いた野球で、存在感を示している。
◆群馬県勢の夏の甲子園アラカルト
【出場回数ベスト5】
1位・桐生14回
2位・高崎商11回
3位・桐生第一9回
3位・前橋工9回
5位・東農大二5回
5位・前橋商5回
【勝利数ベスト5】
1位・桐生第一13勝
2位・前橋工12勝
2位・桐生12勝
4位・前橋育英8勝
5位・東農大二6勝
5位・高崎健康福祉大高崎6勝
【最高成績】優勝・桐生第一(1999年)、前橋育英(2013年)
【通算成績】
137試合
69勝68敗
勝率・504
【主な監督】
稲川東一郎…桐生監督。1955年春にセンバツで準優勝。先進的な指導で、同校を強豪へ育て上げた。春夏通算12回(春6回、夏6回)の甲子園に出場。
福田治男…桐生第一監督。1985年の創部と同時に就任。春夏通算で甲子園に14回出場(春5回、夏9回)。夏は優勝1回と4強が1回で、通算17勝13敗、1分。
荒井直樹…前橋育英監督。母校・日大藤沢の監督を経て、1999年に前橋育英のコーチとなり、2002年から監督。2011年春に初めて甲子園へ出場すると、2013年の第95回大会で初出場初優勝を果たす。
◆デイリー独断!群馬の高校を卒業した選手のベストナイン
【先発】前橋工・渡辺久信(元ヤクルト)
【中継ぎ】桐生第一・小林正人(元中日)
【抑え】前橋・宮田征典(元巨人)
【捕手】東農大二・清水将海(元ソフトバンク)
【一塁手】太田市立商(現・太田市立太田)・細谷圭(ロッテ)
【二塁手】前橋商・五十嵐章人(元近鉄)
【三塁手】前橋工・佐野仙好(元阪神)
【遊撃手】榛名・安達了一(オリックス)
【外野手】桐生・毒島章一(元東映)、前橋・中利夫(元中日)、関東学園大付・岡島豪郎(楽天)
【指名打者】前橋工・狩野恵輔(元阪神)
(ポジションはプロでの登録守備位置、所属は現役の最終所属)