愛媛県の高校野球は、夏の甲子園で全国３位となる５度の優勝を誇る名門・松山商が中心となってきた。

　５度の優勝の中でも、１９６９年の第５１回大会決勝は球史に残る戦いだった。太田幸司（元近鉄など）を擁する三沢と対戦。エース・井上明と太田が投げ合って、決勝では史上初の延長十八回引き分けとなった。翌日は４－２で勝利し、優勝を飾った。

　９６年の第７８回大会は、劇的なシーンで注目を集めた。熊本工との決勝。延長十回１死満塁で右翼に矢野勝嗣が入ると、直後に右翼へ飛球が飛んだ。矢野は飛球を処理後、本塁へノーバウンド返球。サヨナラを阻止すると、延長十一回に勝ち越して、５度目の優勝を果たした。

　松山商は２００１年の第８３回大会で阿部健太（元近鉄など）を中心に４強へ進出。しかし、この大会を最後に聖地から遠ざかっている。

　代わって台頭したのが、０２年創部の済美だった。０４年センバツで初出場初優勝を果たす。

　同年の第８６回大会も出場。エース・福井優也投手（広島）らの奮闘で、決勝まで勝ち上がった。初出場で春夏連覇の偉業を目指したが、駒大苫小牧との打撃戦に敗れた。

　１３年センバツではエース・安楽智大（楽天）を擁して準優勝。夏の第９５回大会にも出場し、３回戦では花巻東を相手に終盤に３点差を追い付いたが、延長十回に力尽きている。

　以前から松山商を目標としてきた愛媛県勢も聖地で活躍を見せている。

　今治西は安定して力を発揮してきた。決勝進出こそないが、春夏通算で４強が５回（春２回、夏３回）。７７年の第５９回大会準決勝では、三谷志郎が東洋大姫路・松本正志（元阪急）と投手戦を展開。ともに９回無失点だったが、延長十回に１点を奪われて力尽きた。

　西条は５９年の第４１回大会で初優勝。決勝では、エース・金子哲夫が延長十五回を投げ抜いて頂点に立った。

　新居浜商は７５年の第５７回大会で準優勝。決勝は、小川淳司（元ヤクルト）を擁する習志野と接戦を演じたが、九回サヨナラ負け。強豪を追い詰めた激戦は県民を感動させた。

　また、宇和島東は８８年センバツで初出場初優勝。９３年の第７５回大会では平井正史（元オリックスなど）、橋本将（元ロッテなど）が中心となって、１回戦で三重を破った。

　川之江は２００２年の第８４回大会で、エース・鎌倉健（元日本ハム）が活躍。２回戦で須永英輝（元日本ハムなど）を擁する浦和学院に対して、八回に４点差を追い付き、九回にサヨナラ勝ちした。

　ただ、高校野球界の先頭を走ってきた愛媛県勢は、最近１０年で３回戦進出が最高成績。今夏は再び全国を盛り上げる活躍が期待される。

　◆愛媛県勢の夏の甲子園アラカルト

【出場回数ベスト５】

１位・松山商２６回

２位・今治西１３回

３位・宇和島東８回

４位・西条６回

５位・済美、川之江５回

【勝利数ベスト５】

１位・松山商６０勝

２位・今治西２０勝

３位・西条１２勝

４位・済美８勝

５位・川之江６勝

【最高成績】

優勝・松山商（４回＝１９３５年、１９５０年＝当時の校名は松山東＝、１９５３年、１９６９年、１９９６年）、西条（１９５９年）

【通算成績】

１８４試合

１１７勝６６敗１分

勝率・６３９

【主な監督】

　一色俊作…松山商、帝京五、新田の元監督。松山商では６９年の第５１回大会で優勝。９０年センバツでは新田を準優勝へ導いた。

　上甲正典…宇和島東、済美の元監督。両校で春夏通算１７回の甲子園に出場し、通算２５勝１５敗。宇和島東、済美をともにセンバツ初出場初優勝へ導いている。

　宇佐美秀文…川之江、今治西、小松の３校で春夏通算９回の甲子園に出場。今治西では９５、９９年に４強へ進出。

　沢田勝彦…松山商の元監督。春夏通算６回の甲子園で、通算１２勝５敗。９６年の第７８回大会で優勝。

　大野康哉…今治西の監督。春夏通算１０回の甲子園に出場。

　◆デイリー独断！愛媛の高校を卒業したプロ野球選手ベストナイン

【先発】松山商・西本聖（元巨人）

【中継ぎ】松山商・佐野慈紀（元近鉄）

【抑え】宇和島東・平井正史（元オリックス）

【捕手】今治西・谷本稔（元阪神）

【一塁手】八幡浜工・河埜敬幸（元ダイエー）

【二塁手】松山商・千葉茂（元巨人）

【三塁手】宇和島東・岩村明憲（元ヤクルト）

【遊撃手】八幡浜工・河埜和正（元巨人）

【外野手】松山商・景浦将（元阪神）、宇和島東・宮出隆自（元ヤクルト）、今治西・熊代聖人（西武）

【指名打者】今治西・高井保弘（元阪急）

（ポジションはプロでの登録守備位置、所属は現役の最終所属）