熊本県の高校野球は、熊本工が中心となってきた。全国中等学校優勝野球大会だった１９３４年の第２０回大会、３７年の第２３回大会は、ともに川上哲治（元巨人）が中心となって準優勝。ともに決勝は２点差の惜敗だった。

　５９年ぶりの決勝進出となった９６年の第７８回大会も、優勝旗まであと一歩だった。

　決勝は松山商と対戦。初回に３点を先制されたが、１点ずつ返し、九回２死は１年生・沢村幸明が同点ソロを放った。

　延長十回は１死満塁として、本多大介がライトへフライを打ち上げた。犠飛でサヨナラ勝ち…と思われたが、松山商・矢野勝嗣の好返球でタッチアウト。

　“奇跡のバックホーム”を許して流れを失うと、直後の延長十一回に３失点して力尽きた。

　熊本工は優勝には手が届いていないが、川上哲治、前田智徳（元広島）、荒木雅博（中日）と、３人ものプロ野球通算２０００本安打達成者を輩出している。前田は８８年センバツから３季連続で甲子園に出場。荒木も９４、９５年のセンバツに出場している。

　熊本工を追い、しのぎを削ってきた高校も甲子園で活躍を見せた。

　県内屈指の進学校・済々黌は、５８年にセンバツ制覇。同年の第４０回大会２回戦でも名門・中京商（現中京大中京）に５－０で完勝した。

　９０年の第７２回大会では１回戦・花巻東戦で５点差をひっくり返す逆転劇を見せた。春夏通算１１回の甲子園に出場し、初戦敗退は１回のみ。聖地で見せ場を作ってきた。

　鎮西は８１年の第６３回大会で４強へ進出。１回戦で取手二に九回サヨナラ勝ちして夏の甲子園初勝利を挙げると、その後は３試合連続で九州勢を倒した。

　８４年の第６６回大会ではエース・松崎秀昭（元ダイエー）が、４試合連続完投で準決勝へ導いた。

　９０年代後半からは九州学院が台頭した。高山久（元西武など）を擁し、９９年の第８１回大会から３季連続で甲子園に出場。

　その後は低迷したが、１０年ぶりの出場となった１０年の第９２回大会では、４７年ぶり２度目の８強へ進出した。

　３回戦・鹿児島実戦では、萩原英之がソロを放つなど八回終了時点で３点をリード。九回裏に同点に追い付かれたが、延長十回に勝ち越して準々決勝へ進出した。

　近年は鍛治舎巧監督（現県岐阜商監督）率いる秀岳館が、活躍を見せた。

　１６年センバツから４季連続出場し、３大会連続で４強に進出した。１６年の第９８回大会では、４番・捕手の九鬼隆平（ソフトバンク）が中心となり、初戦から２試合連続２桁安打を記録。準々決勝では常総学院を下し、４強へ進んだ。

　鍛冶舎監督は、１７年の第９９回大会をもって退任。新体制で迎える初めての夏の戦いにも注目が集まる。

　◆熊本県勢の夏の甲子園アラカルト

【出場回数ベスト５】

１位・熊本工２０回

２位・九州学院８回

３位・済々黌７回

４位・鎮西４回

４位・城北４回

【勝利数ベスト５】

１位・熊本工２９勝

２位・鎮西８勝

２位・済々黌８勝

４位・九州学院７勝

５位・秀岳館５勝

【最高成績】

準優勝・熊本工（３回＝１９３４年、１９３７年、１９９６年）

【通算成績】

１２４試合

６３勝６０敗１分

勝率・５１２

【主な監督】

　林幸義…熊本工の元監督。春夏通算１１回の甲子園に出場。０７年センバツで４強へ導いた。

　田中久幸…熊本工の元監督。９６年の第７８回大会で準優勝。

　木村茂…済々黌、鎮西の元監督。両校で春夏通算５回の甲子園に出場。済々黌では５８年センバツ優勝へ導いた。

　坂井宏安…九州学院監督。春夏通算１０回の甲子園に出場。１０年の第９２回大会で８強入り。

　鍛治舎巧…秀岳館の元監督で、県岐阜商監督。秀岳館で春夏通算４回の甲子園に出場し、１６年選抜から３季連続４強へ導いた。

　◆デイリー独断！熊本の高校を卒業したプロ野球選手ベストナイン

【先発】多良木・野田浩司（元オリックス）

【中継ぎ】八代一（現秀岳館）・遠山奬志（元阪神）

【抑え】必由館・馬原孝浩（元オリックス）

【捕手】熊本工・伊東勤（元西武）

【一塁手】熊本工・川上哲治（巨人）

【二塁手】熊本工・荒木雅博（中日）

【三塁手】八代東・柏原純一（元阪神）

【遊撃手】済々黌・古葉竹識（元南海）

【外野手】熊本商・江藤慎一（元ロッテ）、八代・秋山幸二（元ダイエー）、熊本工・前田智徳（元広島）

【指名打者】八代一（現秀岳館）・松中信彦（元ソフトバンク）

（ポジションはプロでの登録守備位置、所属は現役の最終所属）