人と人をつなぐ甲子園 アルプス席で感じた思いとは
「全国高校野球選手権・準決勝、仙台育英6-2神村学園」(21日、甲子園球場)
仙台育英が勝利して決勝進出を決めましたが、両校に点差ほどの差はなかったように感じました。
仙台育英は三回の4得点で4点差としましたが、五回に1点を取られましたよね。個人的に思ったのは、仙台育英とすれば「まだ3点差ある」というより、「もう3点差しかない」といった感じだったんじゃないかなと。六回から2番手で湯田君を投入したところを見ても、お互いがお互いの強さを認め合っているからこその、試合だったのかなと思いましたね。
やはりアルプスの雰囲気はいいもので、この試合は三塁アルプスで見ていました。そこで、ふいに岡山出身の方に「おかやま山陽を応援していたんですよ」と声をかけられました。「負けましたねえ」と返すと「そうなんですよ、神村に負けたから、神村を応援しようと思って来たんです」ということで。
両校は19日の準々決勝で対戦したわけですが、振り返ってみるとアルプス席の応援団が、おかやま山陽は赤で神村学園も赤が目立つ学校でした。そしてこの日敗れた神村学園の次に、三塁アルプスに入ってきた土浦日大の応援団も赤が目立つチームで。
ちょうど応援団が入れ替わるタイミングで、神村学園の子たちが、第2試合で入ってきた土浦日大の子らに「お前らは勝ってくれよ」と声をかけたりしていたんです。そういうのを見ていると、開幕から多くの方の思いがつながって、つながって、ここまで来ていたいたんだなというのを感じて。それもこの日でいうと、同じ色で、同じアルプスだったという縁だけでね。グッとくるものがありました。
つながりで言いますと、逆の一塁アルプスでのことを聞いたんですが、仙台育英が専大松戸のチャンステーマを演奏していたそうなんです。専大松戸といえば16日の土浦日大との3回戦で、雨の影響で新幹線が遅延したため、応援団が間に合わなかったことが報じられていました。
同じ応援団として、応援できない悔しさが分かるんでしょうね。間に合わずに応援できなかった思いをくんで、演奏することを決めたと。学校が違い、面識もないであろう方々が、その思いをつないでいるというか。勝ち進んだ学校はただ勝っているだけでなく、負けたチームの思いも背負ってそれをぶつけているんだなと。
仙台育英の須江監督も、東北6県の思いをということを言われていましたが、選手だけではなく、人の思いをつないで勝ち上がっていくというところの、重みと素晴らしさ。両アルプスから感じることができた一日でした。
◆かみじょうたけし(本名・上条剛志)1977年12月31日生まれ。兵庫県淡路市出身。龍谷大卒。身長170センチ、50キロ。高校野球大好き芸人として知られる。趣味・特技は競輪予想、モノマネ。