金本を追いかけた新井「アニキらしさ」も寂し
「金本知憲引退表明」(2012年9月12日)
淡々と、慎重に言葉を選びながら、新井は試合前に口を開いた。広島時代からの兄弟のような付き合い。突然の発表に「らしさ」を感じ、同時に寂しさもこみ上げた。簡単に語り尽くせない思いがあった。
「いつも言ってますけど、本当のお兄ちゃんのような存在。男というか、最後も金本さんらしい身の引き方で。さすが金本さんだったなと。金本さんのここ数年の悔しかった分と言うとあれですけど、それも持ちつつ、戦っていきたいと思ってます」
アニキが下した決断。今朝になって知った。さまざまな思い出が頭を駆けめぐった。広島で共に戦い、02年オフにFAで阪神に移籍した金本と同じように、自身も07年オフにFAで阪神へ。そこで「金本さんと一緒に優勝したい思いが強い」と夢を描いた。だからこその心残りもある。
「金本さんを追いかけて来て、一緒に優勝したかったなと。(今日は)『お疲れさまでした』と言葉を交わしました。(金本は)いつも通り笑ってましたね。色々なものをかみしめながら、最後まで一緒にプレーしていきたい」
この日は四回に中前打を放ち、九回には四球で出塁後、代走を送られてベンチから金本の姿を眺めた。「バッターボックスに立っている姿を見て、あと何回見られるんだろうと。そこで実感が湧きました」。迫り来るカウントダウン。共に過ごす残り試合を、決してムダにできない。