アマ時代から肘にメス入れる韓国球界

 投手の故障、とりわけ肘の靱帯(じんたい)断裂などの症例が話題となるたび、名前が挙がるトミー・ジョン手術。1970年代半ばに米国で考案されたそれは、日本でも83年の村田兆治投手(当時ロッテ)以降、聞き慣れたものとなった。韓国、台湾でも同様だ。

 しかし手術に至る事情や背景となると、それぞれ異なる。韓国ではこれまで、およそ50人近くの選手が同手術に踏み切っている。ただし大半がプロ在籍時ではなくその前、つまり高校、大学時なのだ。

 「プロに10人入るとしたら、その半分がメスを入れた経験がある。極端に表現すればそんな実情です」(韓国プロ野球チーム関係者)。なぜそこまで多いのか。同関係者は指摘する。「要するに投げ過ぎ。特に懸念されるのは2月の厳冬期にも公式大会があり、震えるような寒さの中、投げさせられていること。寒さで萎縮した筋肉、フォームで多投すれば、故障を起こすのも必然です」。

 アマではトレーナーなどもおらず、ケアも乏しい。結果、故障が深刻化する。入団してすぐ手術する前提でドラフト指名されるケースも目立つ。阪神の呉昇桓は大学時代に、ドジャースに渡った柳賢振も高校時代にメスを入れている。

 台湾でもこれまで20人程度が手術に至っているが、こちらはプロ在籍時が多い。先発は中6日、100球から120球程度で必ずしも“酷使”はあてはまらない。ただ投げ過ぎは多いという。

 「練習から試合時まで、必要以上にブルペンで投げる、肩をつくる時間が長い投手が多いのです」(台湾球界関係者)。いわばオンとオフのメリハリのなさ。これは体をケアする選手の意識、それを指導するべきコーチらの問題とも言える。「疲労からくるフォームの狂いを指摘し、矯正できるコーチも圧倒的に少ない」(同)となれば、故障につながる比率も高くなるのは無理ない。

 日本などと比べ、アマの選手層が絶対的に薄い韓国、台湾。それだけに秀でた選手の台頭は貴重だ。選手は財産とも言い換えられる。そうした発想で故障やケアの重要性に、より腐心してほしいとも思う。

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