21世紀枠に敗れ「末代までの恥」…世間を揺るがした大騒動
2010年の選抜高校野球、第1試合で向陽(和歌山)に惜敗した開星(島根)の野々村直通監督が試合後に「末代までの恥」などの問題発言を連発し、世間を巻き込む事態に発展しました。あの大騒動を振り返ります。
公開日:2017.7.11
【2010年3月24日デイリースポーツ紙面より】 22日の、大会2日目第1試合で向陽(和歌山)に敗れ、試合後の公式会見で「21世紀枠に負けたのは末代までの恥。腹を切りたい」などと発言した開星(島根)の野々村直通監督(58)が村本克部長(46)を伴い23日、甲子園球場の大会本部を訪れ謝罪した。
(中略)
シルバーグレーのスーツに黒いシャツ、柄ネクタイに白い靴といういで立ちの野々村監督は「いろいろお騒がせしまして申し訳ございません」と頭を下げた。
「負けたことの悔しさ、情けなさがございまして。完敗でしたと説明すればよかったのですが、中国大会で優勝して出てきた限り…」
ここまで話すと目を閉じ、嗚咽(おえつ)をこらえて黙り込んだ。眼鏡を外して泣きじゃくった後「地元の子で厳しい練習をして、何とか島根を日本一にと思っていた」と涙ながらに語った。
中国大会覇者として選抜に出場したプライドや敗戦の悔しさが問題発言につながったようだ。「地元の期待もあり、21世紀枠(の高校)には負けられないと思っていたのに負けてしまい、現実を受け止められなかった。中国代表の名を汚したという強い思いがありました」と話した。
いかなる心情にせよ、21世紀枠批判とも取れる表現をしてしまったのは現実。「誠に申し訳なく、謝罪したいと思っております」と頭を下げた。
去就について聞かれると「高野連から不祥事という処分(で謹慎など)になるかしれないが、もし今後もできるのなら頑張りたいという思いです」と意欲を見せた。
【2010年3月24日デイリースポーツ紙面より】 野々村監督の“不適切発言”は、学校内でも大きな波紋を呼んだ。発言のあった22日だけで、開星高校の専用フォルダーに約160件の抗議メールが殺到。一夜明けたこの日も、2台の専用電話が鳴りっぱなしだったという。広報担当者は「私が座っていた約2時間でも100件以上あった」と話した。また、リニューアル中の学校HPもサーバーダウンし、閉鎖状態になっている。
メール、電話の抗議内容は、監督の配置転換を求める厳しいものが大半。中には「生徒の心のケアを!」という声も寄せられていた。
サッカー部の顧問だった教師が痴漢容疑で逮捕された事件も含め、24日には同校で全校集会を開き、生徒およびその保護者らにも事情を説明する予定。余波はまだまだ収まりそうにない。
【2010年3月24日デイリースポーツ紙面より】 この日夕方には、開星高の大多和校長が和歌山市の向陽高を訪問。約20分にわたり同校の板橋孝志校長(59)に謝罪した。新聞で“不適切発言”を知った板橋校長は「非常に遺憾。勝ち上がっての出場以上に21世紀枠を誇りに思っていたので残念」と終始険しい表情だった。
ただ「礼を尽くしてすぐにおわびに来てくれたことを真摯(しんし)に受け止めたい」と個人的には謝罪を了承。今後は後援会や保護者の意見を精査した上で対応を協議、場合によっては野々村監督本人からの謝罪も要求する。選手には「当面は試合に集中してほしい」と願っていた。
不適切発言から3日後…野々村監督は辞任
続投に意欲を示していた野々村監督でしたが、世間からの非難もあり辞任することになりました。
【2010年3月26日デイリースポーツ紙面より】 82回選抜高校野球大会で、開星(島根)の野々村直通監督(58)が21世紀枠で出場の向陽(和歌山)に敗れた直後に“不適切発言”をした問題で、25日、島根・松江市内の同校で、大多和聡宏校長(52)と村本克部長、野々村監督の3人が同席して記者会見を開き、同監督が25日付で辞任、受理されたことを発表した。野々村前監督の後任には、山本弘和コーチ(34)が就任、村本部長は島根県春季大会まで謹慎処分となった。
(中略)
「私の言動のために、自分の大好きな島根が悪く言われたことに心を痛めました。故郷を良くしようとしていたのに、逆になってしまったのが残念です…」
(中略)
各方面に大きな波紋を広げた“不適切発言”から3日。相手校の向陽に校長が謝罪、同校生徒、保護者に事情を説明したが、電話やメールで監督の辞任を含む厳しい苦情が多数寄せられた。予想外に広がった波紋を受ける形で、山陰を代表する“名物監督”は辞任を決意するに至った。
(中略)
「まだ大会中のチームですが、無心で頑張ってほしい。いい試合をしてほしいと思います」。遅すぎた向陽へのエールが、余計むなしく響いた。