日米野球終えた侍ジャパンの収穫と課題
8年ぶりに開催された日米野球が幕を閉じた。沖縄・那覇で行われた親善試合も含め、トータル4勝2敗。日米野球で勝ち越したのは24年ぶりで、第3戦では4投手の継投でMLBオールスターを相手にノーヒットノーランの快挙も達成した。
世界一奪回を狙う17年のWBCに向けて、強化試合の側面もあった今大会。若手選手が国際試合の雰囲気を味わい、多くの経験を積んだ。
投手陣はレベルの高さを証明。エースの前田や則本が安定感の光る投球でメジャーの強打者を封じ込んだ。20歳の大谷も160キロ前後の直球で空振りを奪うなど、随所に実力を発揮した。
同じくWBCの先発候補として期待される藤浪は、4回4失点と打ち込まれた。「ストレート系はコンタクトされている。緩急があれば、(打者を)狂わすことができる」と小久保監督。伸びしろが期待できる20歳にとって、課題が見つかったことが収穫となった。
過去3大会のWBCでは直前の合宿などでメジャー球への対応に苦労する選手が出ていたが、今回は早くからメジャー球を渡していたこともあり、多くの投手がシーズン同様の投球を披露。指揮官は「投手陣の準備のたまもの」と評価した。
野手陣も代表初選出の若手の活躍が目立った。1番に抜てきされた柳田は持ち味のフルスイングで好成績を残し、大会のMVPに輝いた。菊池も広い守備範囲としぶとい打撃で、二塁の定位置確保をアピール。山田はシーズンでは未経験の一塁を無難にこなし、思い切りのいい打撃も披露した。
弱点も見つかった。大会後、指揮官は「左投手の先発が球界に出てほしいし、右の外野手、右の強打者が必要と感じた」と強化ポイントを挙げた。国際大会ではデータの少ない相手との対戦が増えることもあり、投手も野手もさまざまなタイプをそろえる必要がある。「先発左腕」と「右の強打者」が、チームに足りないピースとして浮き彫りになった。
今回は先発タイプの左腕として岩田と松葉が選出されていたが、ともに安定感を欠く内容だった。球界を見渡しても若い世代の左腕が伸び悩んでいる傾向にある。西武・菊池や楽天・松井裕らの有力候補が、今後どこまで実力を伸ばせるか。
右の強打者という点では4番を任された中田が1本塁打に終わり、大会を通じて低調な成績だった。機動力や小技を絡めながら得点を重ねていくのが日本の攻撃パターンとはいえ、一発で試合の流れを変えられる長距離砲もほしいところ。今後はコンディション次第で、西武・中村への期待が高まりそうだ。
小久保監督は「主力が使命感を持って引っ張ったのは敬意を表する。(今後も)彼らが日本球界を引っ張るのは間違いない」と、手ごたえもつかんだ様子だ。今大会のメンバーを軸に、戦力の底上げをどこまでできるか。今後の侍ジャパンに注目していきたい。
(デイリースポーツ・佐藤啓)