セMVPは該当者なし、か原監督だ

 【関本四十四の「ひとにらみ」14】

 巨人・原辰徳監督が宙に8回舞って3日になる。優勝の美酒の匂いは少しずつ冷めてきたが、その一方で加熱しそうなのが、記者投票で決まる「レギュラーシーズンのMVP(最優秀選手)は誰か?」の話題だ。

 普通なら優勝チーム、つまり巨人から選ばれるのが本筋だ。ところが、今年の巨人に胸を張って該当する選手がいるかとなると、話は違ってくる。今年は昨年のように、バレンティンみたいに他球団からの絶対の候補もいない。

 誰を取ってみても「帯に短し襷(たすき)に長し」というか、まったく物足りない。

 何度も言うけど、今年の巨人、あの戦力を考えると、もっと早く優勝しておかしくなかった。いや、しなきゃならなかった。

 開幕から選手の好不調の波が激しかった。特に打線では4番を固定できず、コロコロ変わった。このため、実に頻繁に組み替えざるを得なかった。

 そうなったのも阿部(慎之助)と村田(修一)の責任だ。打撃30傑(28日現在)を改めてチェックしたけど、村田は打率・252で25位、阿部に至っては27位だ。最高は長野(久義)で・297で13位、坂本(勇人)だって17位だ。これでは推せない。

 亀井(善行)は打って欲しいシーンで確かに期待に応えたけど、規定打席に達していない。一部には「足のスペシャリスト」として鈴木(尚広)なんて声もあるようだが、ウーン、MVPとなるとなあ。

 投手陣に目をやれば、2年目の菅野(智之)が12勝を挙げた。でも、途中で戦線を離脱しているから、この点が割り引き材料だ。杉内(俊哉)の10勝は物足りないな。

 山口(鉄也)、マシソンといった中継ぎ陣も結構やられたからな。どう見ても無理だよなあ。

 こうなると思い出すのは87年(昭和62年)のMVPだ。王(貞治)さんが悲願の優勝を達成したんだが、スター選手がそろっていても、やはり今ひとつ決め手を欠く選手ばかりだった。

 最終的には捕手の山倉(和博)が選ばれた。打率・273、本塁打22本の打撃成績よりも、評価されたのは1シーズンを通してマスクをかぶったというところだった。チームの要であり続けた。

 誰もいないとなると、最終的には捕手となるのが無難な線だ。でも、今年の阿部は1シーズン通してマスクとはならずに、一塁との兼用だった。

 結論だが、こうなったら、「該当者なし」も1つの選択ではないか。“なし”の仕組みにはなっていないが、なにも無理に無理を重ねて選出する必要もないと思う。

 それでも、どうしてもと言うのなら、オレは「原辰徳監督」でOKだと考える。あれだけ好不調のある選手を抱えても、日々工夫を重ねながら1シーズン戦い続け、「さらには団結力」でチームを引っ張り、ついには宙を舞った。

 言葉は悪いが、まるで「やり手婆」のようだった。敬意を込めて、オレなら投票用紙に「原辰徳」と書き込むところだな。

(デイリースポーツ評論家)

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