愛媛・高原 総合Vへフォークで勝負

 【愛媛・高原和弘投手】

 高原和弘は小学校から高校卒業まで埼玉県の北西部、秩父市で育った。猛暑で有名な熊谷市はすぐ隣である。初めて過ごす愛媛の夏について聞くと「向こうに比べると、こっちは涼しいです」と余裕のあるところをみせる。

 後期の首位を走る愛媛でセットアッパーを務める。存在感を見せたのは前期最終戦となった対香川前期12回戦(6月28日、マドンナスタジアム)だった。もし敗れれば、香川に目の前で胴上げの瞬間を見させられることになる。

 八回表、最後は3番・長安駿作を鋭く落ちるフォークボールで空振り三振にとり、無死満塁のピンチを無失点でしのぎ切ってみせた。

 「もちろん、目の前で胴上げは見たくないですけど。それよりもここで抑えなきゃ、今後なかなか使ってもらえないだろうなと危機感をもっていました。自分にプレッシャーをかけるわけじゃないですけど『思い切ってやっちゃおう!』って」

 上を目指して飛び込んだアイランドリーグで、レベルの高さに戸惑っていた。開幕から1カ月後、大学の先輩でもある小川敦史が自由契約となり、愛媛を去って行った。いま試合で使っている赤いグローブは元々、小川の物だ。「頑張れよ」と託されるようにして手渡された新品である。

 「もう、やるしかないなと。考えてるヒマがあったら動くしかないな、というのは思いましたね」

 プロの世界の厳しさを目の当たりにしながら、セットアッパーというポジションにもようやく慣れてきた。とにかくいまは目の前の打者、1人1人を抑えて行くことだけに集中する。

 「入団当初から気持ちの面を見てほしいと言ってきたんですけど、最近は自信が付いてきたので、フォークボールを見てほしいと思います」

 後期優勝、そして初の総合優勝を目指し、勝利の方程式に加わることができるか。

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