徳島・松嶋 不安に負けない自分への期待

 【徳島・松嶋亮太内野手】

 7月のある日、電話の向こうで母・寿枝(としえ)が言った。

 「北米遠征から帰ってきて日本で試合したら、バカみたいに打てそうな気がせん?」

 だが、松嶋亮太の胸にそんな余裕などこれっぽっちもなく、あるのは不安だけでしかない。

 しかし、帰国後に行われたオープン戦、対愛媛戦(7月12日、三好)で左翼越え2ランを放つ。その2日後、オリックス2軍との交流戦(14日、ほっともっとフィールド神戸)でも、左翼スタンド上段に特大の2ランを突き刺してみせた。

 「母さんに『ほら!』みたいな感じで言われたんですけど。やっぱり、いまでも不安しかないですし、今回のフューチャーズ(イースタン・リーグ混成)戦でも不安しかなかったです」

 アイランドリーグ・オールスターズとして臨む、最後の3連戦となったフューチャーズ戦(28~30日、東京・大田スタジアム)でも4番に座り、12打数4安打、3打点の活躍を見せている。得点圏打率は・500と、勝負強さも発揮した。

 打球が変わってきている。いままでになかったような高い角度で舞い上がり、これまで感じたことのない感覚が体に残る。そんな打席が増えてきた。

 「今シーズンの大きな目標が『自分の形を見つける』なんですけど、いまホントにつかみそうなので。いまのいい状態を後期34試合、同じ状態、同じ気持ちで続けられたら、野球人としても1人の人間としても、自信になると思う」

 31日午後2時、文字通り「炎天下」となった灼熱のグラウンドに、松嶋と宮下直季、2人の姿があった。3連戦を終えた東京からバスで10時間以上をかけて帰って来た。自宅に着いたのは朝4時のことである。

 「あした開幕ですから。体、動かしとかないと嫌じゃないですか」

 そう言いながら、全体練習が終わったグラウンドで、汗だくになってバットを振り続けていた。

 不安はいつも付きまとう。しかし「何かがつかめるのではないか」という自分への期待も、それに負けず劣らず大きい。

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