愛媛・古村 サイドスロー転向でスライダーが打者の脅威に
【愛媛・古村徹投手】文=高田博史
きっかけは前期リーグ戦終盤の5月半ば、河原純一監督(元巨人ほか)からの一言だった。古村徹が言う。
「僕の得意なスライダーが“横曲がり”だったことと、僕の腰の動きが横曲がりしてるのを見て、河原監督が『そっちのほうが合ってるんじゃないか』と」
オーバースローより少し腕を下げたスリークォーターの投球フォームが、どうも体に合っていないように見える。さらに腕を下げて投げるサイドスローへの転向を勧められた。
昨年、0・80を残した防御率が、今年は5点台とふるわない。スピードを求めすぎてコントロールが定まらず、四球で自滅するケースも多かった。
オフから積み上げてきたものを、いったんゼロにしてしまうことになる。だが、新たなフォームに懸けてみようと思った。サイドスローはDeNA時代に経験しているが、当時は肩の痛みがあったため、思うような投球ができていない。
中断期間はフォーム固めと投げ込みに費やした。バント練習で投げていたときのことだ。ストレートとスライダーの2種類と分かっているのに、打者がバントに苦戦している。
それを見ていた臨時コーチ・小田幸平氏(元巨人ほか)に「自分が思っている以上に、バッターがボールを脅威に感じている。人生変わるチャンスがあるかもしれん」と言われた。その一言が心のよりどころとなっている。
「もっとサイドスローを追求しようかなという思いが強くなりました。上から投げてた人がサイドスローで投げるというのは、どうしても球速が落ちることを覚悟しなきゃいけないので、なかなか殻を破ることができないんですけど」
この2カ月で変化球の種類も増え、投球の幅が広がっている。何より試合で使えそうな手応えがある。
「球団スタッフとしてDeNAに残らないか」との誘いを断ってまで選んだ現役復帰への道だ。ケガのない自分がどこまでやれるのか、試してみたい。
「いま、後期に入るのがこれまでで一番楽しみです」
この夏、生まれ変わった新たな姿でマウンドに登る。