徳島・伊藤、勝ちきれなかった高校時代…悔しさ胸に養父監督もう一度胴上げだ
【徳島・伊藤翔投手】文=高田博史
チャンピオンシップのマウンドを経験し、伊藤翔はさらにレベルアップした。
「一番成長したなって感じるのは、最後まで勝ち切れたこと。優勝を決める試合というか、そういう大きな場面で先発としてマウンドに立てたっていうのは、すごく大きな僕の経験値になりました」
第1戦(9月23日、JAバンク徳島)。短期決戦で最も大事だと言われる初戦のマウンドを託され、期待通りに完投勝利を収めた。「勝たなきゃいけない」というプレッシャーは背負っていない。胸に秘めていたのは「僕が完ぺきに抑えて、チームに勢いを付けたい」という使命感だった。
2度目の先発登板となったのは、年間優勝に王手をかけて臨んだ第4戦(10月1日、四国Cスタ丸亀)初戦とはまた違った気持ちで臨んでいる。
「どんな形でもいいから勝つ。1戦目みたいに『勢い付けて行こう』とかもなかったし。どんな形でもいいから、相手より1点少なく抑えて勝つことしか考えてなかったので。その結果、ゼロに抑えて完封できたのはすごく良かったです」
高1の夏は自身の守りのミスで、高2と高3の夏はマウンドに登りサヨナラ負けした。恩師、伊藤匠監督(横芝敬愛)の「サヨナラ負けしたことを無駄にしてほしくない」という言葉を忘れたことはない。
CS第4戦九回裏、最後の打者を空振り三振に獲ったときだ。
「あ、できたと思いました。大事な試合で勝てるピッチャーって、こういうのかって…」
高校時代の自分に、ようやくケリをつけることができた。翌朝、恩師に優勝と完封勝利を報告している。
「勝ち切れました」
「おめでとう。これからも頑張れ」
次のマウンドが今年の集大成となる。
「欲はかかないで、ホントにいつも通りにしっかりチームのために投げる。1点でも少なく抑えて優勝したいと思います。日本一になって、もう1回徳島で養父(鐵監督)さんを胴上げしたいです」
日本一を置き土産に、空高く飛び立て。