香川・秀伍、挑戦し続けた2年間 3冠を手に現役生活に別れ
【香川・秀伍投手】文=高田博史
秀伍にとっては、挑戦し続けた2年間だった。
「挑戦してなかったら見えてこなかったものが、いろいろあったと思いますし、確実に後悔してたと思う」
投手としてマウンドに登っていたのは高2の春まで。以降、大学から社会人野球までの8年間、外野手だったことは、いまではよく知られた話である。投手としての経験値がほぼゼロのまま、アイランドリーグで自身の可能性に賭けた。
昨年、チーム2位となる6勝を挙げる。ドラフト候補にも上ったが、指名されるには至らなかった。
悔しさは冬のトレーニングにつながる。昨年よりパワーアップした状態でシーズンに臨み、開幕から5試合目で初失点するまで30イニング無失点を続けた。
「やってきたことは間違いじゃなかったんだなって、最初は結果に出たんですけど。後期ですね。前期優勝して、同じ気持ちで挑んだつもりだったんですけど、やっぱり体の疲れだったり、見えないところで…」
勝ち星が伸びない。コンディションが決して万全ではないなかで、できることを精一杯やろうとした。俺がガイナーズを背負っている。そんな重圧がいつもあった。NPBに向けてのアピールだってそうだ。
「年齢も年齢だったので、相当なアピールをしなきゃいけない。気持ち的にはしんどかったですよね。毎日が。寝てるときでも頭のなかで考えたり。家にいたら『練習しなきゃ』と思って、ジムに行ったり。落ち着きがなかったですね。不安と焦りがあったので」
そうやって手にした最多勝、最多奪三振、ベストナインのタイトルである。
願わなかったらかなわない。ドラフトが終わってしまうまで、指名を信じて待った。結果の出たその日に両親、お世話になった人たちに引退を報告している。
「挑戦したことは、絶対に今後の人生に生きてくるから」。2年前、そう言って背中を押してくれた社会人野球時代のコーチに「挑戦して良かったです」と伝えた。
「お前からその言葉が聞けて、良かったよ」
最後まで挑み続けた野球人生に、悔いはない。