愛媛・高下、練習生からのスタートも-全てを出し切った2年間
【愛媛・高下貴生投手】文=高田博史
オレもやれるんじゃないか?高下貴生がアイランドリーグに飛び込んだのは、高校時代のチームメートだった山本雅士(元中日)が、徳島からドラフト指名を受けたことがきっかけだった。
挑戦は2年間と決めている。だが、1年目は3勝を挙げたにとどまり、練習生でシーズンを終えた。意を決して臨んだ2年目も、開幕から練習生スタートを言い渡されている。
「そのときが一番しんどかったというか。1年目にそういうことがあって、2年目が始まるときにも『練習生で』と言われるという。(契約選手に)上がっても負け試合の中継ぎで、敗戦処理ばっかりだったので。一番、野球しんどいなあと思った時期ですね」
ここで腐ったら、後々後悔する。野球をするためにここに来たのに、野球で腐ったら情けない。いつか見返したいと、チャンスが来るのをずっと待っていた。
入団したてのころは、チームの成績よりも自身の結果を求めていた。しかし、ファンと接するなかで、この人たちと優勝を分かち合いたいと考え始める。
「ファンの人がいて、自分たちが野球できていることが分かって。ファンと球団の関係者とチームのメンバーで優勝したいなと。2年目が始まる前に」
残り2試合。“負ければ終わり”の状況で行われた対徳島後期7回戦(9月18日、坊っちゃん)で、7回無失点と好投し、引き分けに持ち込む。7戦無敗の勢いに「優勝いけるぞ!」と確信した翌日、最終戦に勝利して歓喜の瞬間が訪れた。
「選手として全うして、次も野球に携わる道に行けたというのは、ほんとにありがたいですね」
できれば野球に携わる仕事を、と考えていた。希望がかない、オリックスの打撃投手として採用されている。アイランドリーグに来たからこそつながった道だ。
2年間、自分の夢のためにすべてを捧げてきた。
「やり切った感じはしますね。結果も出せて、最後に無失点で終われて。“報われた”じゃないですけど」
後悔を残さずに野球を終われた。次は裏方として、春季キャンプに向けトレーニングを始める。