高知・嘉数、記憶に残るアイランドリーガーに 阪神・球児らから刺激受け…
【高知・嘉数勇人投手】文=高田博史
2014年の秋、独立リーグのトライアウトは2年連続で不合格だった。翌年25歳になる。嘉数勇人にとって、年齢が大きな足かせとなっていた。
「実戦タイプだと思ってるので、入りさえすれば通用する自信はあったんですよ。どうやって入るかだけ」
3年間勤めた会社を辞め、沖縄に戻ろうと考えていた15年1月、高知の独自トライアウトに合格し、入団が決まる。NPBを目指すより、野球をやり切りたいという思いだった。
この年の6月、衝撃的な出来事が起こる。藤川球児(阪神)の高知入団である。
「野球がすごく好きな人だなっていうのを感じて。この人と一緒にNPBの舞台でやりたいと思いました」
思い出に残るのは対愛媛後期1回戦(15年8月7日、高知)。序盤に降板した外国人投手を嘉数がリリーフする。五回から登板した藤川に初めての勝ちが付いた。
藤川から得た刺激が、自分を成長させてくれた。それはその後、4年間も現役を続けることにつながる。
「ドッグスにいたなかで松本英明、平良成、中村憲治の存在は大きくて。彼らが16年に高知を去りましたけど、松本の『駒田監督を胴上げしたかった』っていう思いもあったし」
17年、仲間たちの思いを引き継ぐつもりで主将を務める。チームメートや高知のファンに、勝つ喜びと勝って初めて分かる野球の面白さを知ってほしい。そんな思いで優勝を目指した。
今季限りで現役にピリオドを打っている。現在は故郷・那覇に戻り、家業の工場を手伝う。彼もまた、記録以上に記憶に残るアイランドリーガーとなった。
これからプロを目指そうとする選手たちの“道しるべ”になりたい。そんな気持ちも少なからずある。
「4年いたから分かることもある。思い出話になるのか、ビジネスに変わるのか、分かんないですけど。この経験はムダにしたくないなって」
あのとき挑戦したから、その後の4年間がある。ここに来なければ、藤川と同じチームでプレーすることもなかった。アイランドリーグは自分にとって、チャンスをくれた場所。