これぞ阪神理想の勝ちゲームだ。4番・浜中に今季初アーチが生まれ、そしてエース・井川慶投手(23)が広島を4安打に抑えて完投勝利。開幕戦で苦杯をなめた男が、登板2戦目で力強く今季の第一歩を記した。これで2カード連続勝ち越し。投打の両輪がかみ合った阪神、やはり強いゾ。
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阪 神 |
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勝:井川1勝
S:− |
本塁打:浜中1号、アリアス2号 |
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広島を4安打に抑えチーム初完投で今季初勝利を挙げた井川 |
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ここで降りては男がすたる。虎のエースの名に恥じる。痛くないといえばうそになる。だが、マウンド上の阪神・井川はそんなそぶりを見せなかった。左足はうずいても、強いハートは揺るがなかった。
二回。無死一塁の場面でアクシデントが起こった。前田の放った打球が左足を直撃した。それでも執念でボールを追い、一塁に投げ返した。これが逸(そ)れて(記録は失策)ピンチは拡大。だが何よりベンチをヒヤリとさせたのは、患部の状態である。
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待ってた浜ちゃん!二回に今季1号七回にはV犠飛と4番の仕事 |
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試合後。井川は一瞬、顔をこわばらせてこう言った。「ちょっと痛かったですね」。めったなことでは屈しない男が、素直に痛みを明かした。
だが治療にも下がらず、そのままマウンドにとどまった。その直後、木村拓に左犠飛、西山には右前打を浴びて、2失点。確かに投球に支障はあったが「降りたら後のピッチャーに迷惑がかかるので」との一心で踏ん張った。
三回以降は、気力で広島打線に立ち向かった。「ボールを低めに集める」ことだけを意識し、投げ続けた。七回には自ら中前打を放ち、勝ち越しのきっかけもつくった。終わってみれば、今季チーム初となる125球の完投勝利。これまで登板機会の多かった中継ぎ陣も休ませた。やはりこの男は頼りになる。
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恐怖の6番健在!七回アリアスは左越え3ランでトドメ
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3月28日の横浜戦。2年連続の開幕投手を務めたが、6回3失点で苦杯をなめた。そこから中5日での登板。若き左腕にも心の葛藤(かっとう)があった。2日の試合前。ベンチ裏で井川は言った。「マスコミの皆さんのプレッシャーがね」。顔は笑っていた。もちろん冗談である。だがどこかに本音も入り交じった。開幕戦の黒星を払しょくするためにも、この試合、誰より勝利を欲していた。
ゲーム終了後。井川は虎党の大歓声に応えながら、小走りで帰路についた。「今年はよく当たりますね。考えないといけませんね」。2月の紅白戦でアリアスの打球を左太ももに受けたことを引き合いに出し、反省の言葉を連ねた。慢心などない。優勝を奪い取るその日まで。井川はどんな苦難にもへこたれず、走り続ける。(岡本浩孝)
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