浜ちゃんは幸せ者だと思う。今岡、金本、桧山にアリアス…。頼り甲斐のある打者が前後にいるからこそ、フルスイングができる。阪神の4番・浜中おさむ外野手(24)が、2発5打点の大爆発。今季初の大入り4万8千人の前で見事にうねった。主砲が打って3連勝。大阪ドームが燃えた―。
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ヤクルト |
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阪 神 |
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勝:ムーア2勝
S:− |
本塁打:浜中2、3号、片岡1号 |
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4番を打つことにどこか自信が持てなかった。落ち込み、自問自答を繰り返した日々。でも、そんな毎日にやっと別れを告げられる。
「4番のプレッシャーもありましたし、いろんな声も入ってきましたけど、これでスッキリしました」
背負ってきた“重荷”を下ろし、浜中の目が輝きを増した。
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投げれば快投、打っても2安打さらに炎のヘッドスライディングも魅せたムーア
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昨年の8月1日(対横浜・甲子園)以来、プロ2度目となる1試合2本塁打。1発目は、初回の二死無走者の場面で生まれた。136キロの直球を振り抜くと「今年一番の当たり」が左中間へ突き刺さった。
三回に左線適時二塁打を放ち、そして四回二死一、二塁の第3打席。「打てる球を打とうと思った」。128キロフォークを強振すると、白球は今度は右中間スタンドに吸い込まれた。今季初の猛打賞。そして5打点だ。
「自分はホームランバッターとは思っていない。ヒットの延長線がホームランです」。豪快な2発にも口元は緩めない。何よりうれしかったのは、金本と交わした“約束”を果たせたこと。開幕前にかけられた言葉が胸に刻まれている。
「俺は走者を進めるバッティングをするから、お前が4番として走者をかえしてくれ」―。
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八回に復活の2ランを放った片岡は「よっしゃー」と絶叫 |
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三回は一ゴロで、二塁走者を三塁に進め、四回には安打でチャンスをつないでくれた。広島時代は4番を打ち、“トリプル3”を達成した金本が、自分のために犠牲になってくれている。「やる気が出たし、金本さんの打席を無駄にしたくなかった」。気持ちが伝わった。だから打てた。
星野監督が言った。「金本がきっちり、ああいうバッティングをするから、浜中が楽に立てるんや。それが打線や」。2人の信頼関係を、指揮官も見抜いている。
まだ練習でしか使用していない新しいグラブの内側には、長男・一真(かずま)ちゃん(1つ)の名前を刺しゅうした。一家の大黒柱としての責任感。そしてタテジマの主軸を担う重圧感。時に逃げ出したくなるような期待が、自分を成長させてくれた。「これからもどんどん打っていきたい」。笑顔で球場を後にした浜中の背中が、大きく見えた。(道辻 歩)
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