連勝だったのに―と言うのはヤボってなもの。痛恨のドローとなった初戦の(11日)の悪夢を、三回の大量8点できれいにぬぐい去った。トドメはアリアスの2試合連続弾。ショックを引きずらないのが今年の阪神。G戦今季初勝利となった星野監督(56)も、これで一安心でしょう…ね。
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阪 神 |
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勝:ムーア3勝
S:− |
本塁打:今岡1号、アリアス5号 |
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星野監督は喜んでいた。感激していた。伝統の一戦での今季初勝利。打線が爆発しての快勝。ムーアの好投に今岡の一発…。それだけがうれしいんじゃない。過去を振り返らず、ひたすら前を見つめて戦ってくれた選手たち。その姿に闘将は目じりを下げた。
「選手が切り替えて、きょうを迎えてくれたのがうれしい。今までならズルズルと変な格好になっていた。それを切り替えてくれたのがうれしいね」。
“後遺症”なんてみじんも感じさせなかった。三回に一挙8点の猛攻。今岡の先制2ランが打線に着火し、赤星、金本が連打。桧山、アリアス、おまけにムーアまで適時打を放って前夜のうっぷんを晴らした。
悪夢のドロー。11日の試合は九回に6点のリードを追いつかれた。「よう負けんかったと思っとる」。追いつかれたことよりも、延長に入って持ちこたえたことに確かな成長がある。そう信じて臨んだ2戦目だった。
前日の試合後、宿舎に戻った指揮官は選手全員を集めた。今季初の緊急ミーティング。うつむく選手たちに声をかけた。「長いシーズン、6点差を追いつかれることもある。切り替えていこう」。落ち込んでいる暇はない。今の阪神には前進あるのみ。日付の変わりかけた真夜中、虎は息吹を取り戻していた。「強くなったよ」。激闘から一夜明けて、星野監督はそうつぶやいた。
赤星がナインの気持ちを代弁する。「ああいうゲームもある。きょう(前日の)悔しさはなかった。勝ったのが大きい」。金本が言う。「気持ちを前向きにいった。前向きに考えたら昨日の試合も負けてなかった」。宿敵に実力で圧倒される時代は過ぎ去った。
九回、吉野から金沢に交代する際、星野監督は怒った。「(登板が)決まってるのになかなか出てこん!トントンといかなあかんのに」。そんなことでリズムを崩したくなかった。最後まで気は張り詰めていた。
五回に2点を奪われた。それでも前夜の重いムードはベンチになかった。「あんなことは何年かに1回のことや」。そう言って笑い飛ばした。悪夢は振り返らない。思い描くは18年ぶりの夢しかない。(岩田卓士)
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