甲子園は、世界一です―。桧山進次郎外野手(33)の放った打球は、浜風に乗り、左翼ポール際に吸い込まれた。桧山の初のサヨナラ弾に、大喜びしたのはファンだけじゃない。甲子園初登場の伊良部。11奪三振で、堂々の2失点完投勝利。頼れる2人の働きで、首位・中日に並んだ。
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横 浜 |
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阪 神 |
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1× |
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勝:伊良部3勝
S:− |
本塁打:桧山2号 |
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よっしゃ!選手会長の桧山がレフトにサヨナラアーチだ |
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プロ12年目で初めて味わうサヨナラアーチに、酔う暇もなかった。本塁ベース上で待ち受けるナインの中に、満面の笑みで両手を上げている伊良部もいる。バンザイしながら、見えないベースを探して踏んだ。
会心の一発じゃない。2―2の九回裏、2ボールからホルトの141キロの速球をたたいた桧山の打球が吸い込まれたのは、左翼ポール際のフェンスギリギリだった。「こすっていたから、あとは浜風が助けてくれるかだけだった」。いつもは左打者にいじわるな浜風が助けてくれた。
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「しびれたねえ」と感動の星野監督と先発の伊良部が桧山を祝福 |
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「(甲子園でのサヨナラ本塁打は)プロに入った時から考えたこともなかった」。大型補強で生まれ変わった虎打線。見えない影響は選手会長に重くのし掛かっていた。昨季からの不動の5番。しかし、今季は開幕から1試合を除いてスタメンで不慣れな一塁を守る。打率は・257。決して満足のいく数字ではない。
「ボール球に手を出したり、ミスショットしたり…。自分のバッティングができなくてイライラした」。金本は、開幕から好調を持続。4番・浜中も日に日にたくましくなっていた。無意識に膨れ上がる焦り。それでも慣れない守備の影響は、決して口にしなかった。
どんなに霧が晴れなくても、続けてきたことがある。打撃練習の最初の2、3球を内角球でも必ず左翼へとはじき返す。あまりの強引さに、注意を受けたこともあった。
しかし、桧山は言う。「僕は左打ち(流し打ち)を練習しているんじゃない。(左への意識を持てば)追い込まれてもセンターへと打てる」。打線の核として何が何でも出塁する責任感が“必須練習”の根底にある。
ベンチ前へ飛び出した星野監督は、桧山を出迎え「ようやった」と抱きしめた。桧山が「ナイスピッチング」と伊良部の健闘を称えると、もう1人のヒーローは「ありがとう」と応えた。
2人並んだお立ち台で「やりました!」と絶叫した桧山に、大観衆が地鳴りのような歓声を送った。白球を乗せた浜風は、桧山の静かな戦いを見ていてくれた。今日のヒーローは桧山。マンモスの神様が、そう決めた。(船曳陽子) |