ネバサレ魂…。いや、もう古いな。彼を「勝ちたいねん魂の伝道師」と呼ぼう。阪神が首位を守る逆転3連勝。ヒーローはT・ムーア投手(30)。打って走って、もちろん投げても大活躍だ。闘志あふれるヘッドスライディングには、うん、文句なしに感動した!
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横 浜 |
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阪 神 |
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× |
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勝:ムーア4勝
S:ウィリアムス5S |
本塁打:− |
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五回二塁走者のムーアは犠打で三塁へヘッドスライディング |
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スタンドから帰ろうとする虎党は誰一人いない。視線の先に、カクテル光線を受けて光り輝く丸い頭。「タイガースファンガ、イチバンヤ!」。かつてオマリー特命コーチの“専売特許”だったフレーズに、スタンドがどっと沸き返った。
投げて打って走って―。すべてでムーアがファンの心を奪った。
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七回に勝ち越し適時打を放った赤星(右)はムーアひげをつけてお立ち台へ |
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自分で自分を乗せる。七回裏、先頭打者として右中間フェンスを直撃する二塁打。続く今岡の飛球気味に上がった送りバントには、判断良くスタートを切って三塁に猛然とヘッドスライディングし、一塁・ウッズの犠打野選を誘った。
「打球が上がったのでちゅうちょしたけど、ウッズが後ろにいたのでいけると思った」。胸元の土を誇らしげに払った後は、赤星の中前打で決勝のホームを力強く踏む。
マウンドでは苦しいスタートだった。二回、二死から7番・金城に左中間二塁打を許すと、8番・中嶋に中前へ運ばれ先制された。三回には一死満塁から5番・ウッズに投じたカウント1―1からの変化球が、ハーフスイングながらボールと判定され、続く4球目が押し出し死球となり、村田の左犠飛でこの回2点を失った。
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九回ウィリアムスは最後の打者石井を三振に斬り雄叫び |
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しかし、そこからが本領発揮だった。同点に追いついてから八回までは、二塁すら踏ませない。圧巻は五回。無死一塁から3番・鈴木尚、4番・佐伯、5番・ウッズを3者連続、変化球で空振り三振に仕留めた。
ナインのムードメーカーでもある来日2年目のサウスポーは、猛烈な速さで日本語を習得している。“愛妻”矢野も「コミュニケーションに問題はない。日本語でほとんど話してますよ」という。
完投を志願したムーアに、指揮官は「打席が回ってくるからやったんかな」と苦笑い。「それも含まれるけど」と“してやったり”のムーアは、ウインクしながら「下位打線だからいけると思ったんだよ」という。今季最多の126球。中継ぎ陣を何とか休ませたかったのが本音だ。
あと1人でマウンドをウィリアムスに譲ったが、セ界唯一の無傷の4連勝に変わりなし。チームも3連勝。そして開幕から4週目に入った「無敗サタデー」の神話も続く。「自分だけじゃなく、打線がやってくれたから」。そういたずらっぽく笑ったムーア。いや、ムーア様と呼ばせてください。(石川真之) |