奇跡や!優勝や!猛虎の大逆転奪首や!4―10で迎えた八回、阪神打線が14人攻撃で9得点。試合をひっくり返して再び首位に立った。2安打3打点の藤本も、代打で決勝犠飛を打ち上げた八木も、み〜んなえらい!で、星野仙一監督(56)がつぶやいた。「こんな試合、初めて見たわ」―。
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広 島 |
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2 |
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阪 神 |
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1 |
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9 |
× |
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13 |
勝:伊代野1勝
S:ウィリアムス6S |
本塁打:− |
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4万7千人の予感は、いつしか確信に変わった。本塁から中堅へのフォローの風は、猛虎打線が奇跡を起こすためだけに吹いていた。「ネバサレ」なんて言葉すら安っぽい。6点を跳ね返す怒とうの大逆転。「忘れられないね」。指揮官の声が震えた。
勝負あり―。少なくともそう見えた。八回、4―10。しかし、席を立つ一塁側スタンドの少数の観客を留めるように、片岡、矢野が内野安打で続いた。無死一、二塁で打席は「最強の8番」藤本。ニューマンから右中間を破る三塁打で走者一掃だ。これが長い長い逆転劇の始まりだった。
無死三塁から代打・中村豊が左前適時打で3点差まで迫ると、一死から赤星がテキサス安打でつなぐ。ニューマンに代わった玉木の表情が凍りついた。続く金本、浜中に連続死球で一死満塁。この日4タコに倒れていた桧山の意地が、そこでようやく目覚めた。投手をかすめて左翼方向へころがる同点2点適時打だ。
4者連続で先発全員安打。だが「神様」だって忘れてもらっちゃ困る。一死二、三塁から右翼へ決勝犠飛を決めた。まだ終わらない。二死一、三塁から藤本が再び中前適時打。中村が相手守備の穴を突く絶妙のプッシュバントでもう1点を追加。広島の息の根を完全に止める打者14人9点の猛攻を締めくくった。
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肝っ玉ルーキー伊代野は2/3を無失点でラッキーなプロ初勝利 |
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中日戦連敗のショックを払しょくしただけじゃない。大逆転劇はもう1つのトラウマを完全に忘れさせた。11日の東京ドームで6点リードを追いつかれてのドロー劇だ。「今日は追い越したからな」。闘将・星野のプライドは保たれた。
「みんなの声援に後押しされた。こういう展開はなかなかないですよ」と桧山の声が弾む。「1人1人が塁に出ていくうちに、こういうことになるんだ」と八木。“奇跡”は必然だった。
「首位?くだらんこと言うな!」。最後に手綱を締めた指揮官の目に映るものは、昨日までと違う。遥か遠くに見えたVロードは、いま、はっきりと視界に入った。(船曳陽子)
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