甲子園が揺れた、燃えた。熱戦にピリオドを打ったのは、神様だ。同点に追いついた八回、八木の内野安打が勝負を決めた。超満員では8連敗中だったが、金本も、片岡も打った。赤星が走った。手負いの巨人も、スゴイ。これぞ、伝統の一戦。5万3000人、全員が熱くなった。 |
|
巨 人 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
4 |
1 |
0 |
0 |
|
6 |
阪 神 |
1 |
1 |
1 |
0 |
1 |
1 |
0 |
3 |
× |
|
8 |
勝:安藤1勝
S:ウィリアムス7S |
本塁打:片岡3号 |
|
大歓声が全身を包み込んだ。矢野の一打で6―6の同点に追い付き、なお二死満塁の八回だ。「勇気をもらえました」。代打に向かった八木の心は奮えていた。5万3000観衆の声援が、プレッシャーを取り去り、逆に力を与えてくれた。
今季初となる、本拠地での伝統の一戦。一度は逆転され、追い付いては勝ち越された熱戦のラストは、やはりこの男が締めた。
|
|
五回裏、金本は右線に3打席連続となるタイムリーを放つ |
|
久保がカウント0―1から投じた142キロの速球を、迷いなくたたいた。打球は三遊間に転がった。八木は全力で一塁に走った。ショートの二岡は抑えるのが精一杯。次の瞬間、三塁走者の桧山が、手をたたきながら、勝ち越しのホームを駆け抜けた。
「執念ですよ。球場全体の執念が、内野安打を呼んでくれた」
金本とともに上がったお立ち台。仕事を果たした代打の切り札は、穏やかな笑みを浮かべて、そう言った。巨人戦負けなしの3連勝。5万3000人が入った本拠地ゲームは昨年から8連敗していたが、そんな悪しき流れにも終止符を打った。
|
|
九回最後の打者・清原を三振に斬り雄叫びをあげるウィリアムス |
|
代打として勝負の分岐点となる場面を、何度も経験してきた八木でも、今季はこれまでにない独特のムードを感じ取っている。「セ・リーグ全体、どこの試合にも『何かが起こる』という雰囲気がある」。星野虎にも6点差を追いつかれた巨人戦、6点差をひっくり返した広島戦があった。
一瞬たりとも気が抜けない。試合前、その思いがさらに強くなった。練習終了後。ロッカーで九回に3点を取って、逆転サヨナラ勝ちした広島のゲームが目に入った。「不思議な感じだね。でも、その中心にタイガースがいれるようにしたい」。荒れるゲームの連鎖が、百戦練磨の男の戒めとなった。だから究極の状況下でも、おくせず役目を果たせる。
最後まであきらめない。それが星野虎。その原動力は、どんな苦境に立たされても変わらぬ応援で支えてくれる、ファンである。「勝つことが、一番の感謝の仕方だからね」。八木の言葉はナインの総意だ。もう負けない。スタンドを埋める虎党の存在がある限り、タテジマはVに向かって、走り続ける。(岡本浩孝) |