手負いの巨人、確かに弱い。でも、手加減はしません。弱いものを徹底的に叩くのは、勝負事の鉄則です。金本&片岡の新旧FA砲が大活躍し、痛快な3夜連続逆転勝ち。藪が熱投、赤星も3盗塁に超美技で、星野仙一監督(56)の通算850勝に花を添えた。阪神、本当に強すぎるゥ〜ッ。
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巨 人 |
1 |
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阪 神 |
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2 |
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× |
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3 |
勝:藪2勝
S:ウィリアムス8S |
本塁打:− |
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闘将は嫌いだ。「FA砲」という呼び名が大嫌いだ。1度タテジマに袖を通せば、みんな同じ虎戦士だという。しかし、自ら新天地をマンモスに求めた「FA砲」だからこそ、ドラマを生む。01年7月以来、約2年ぶりの巨人3タテ。1分け含め、開幕から無傷の5連勝で宿敵を完膚なきまでにたたきのめした。
殊勲打は、優勝を請け負ってタテジマを着た2人の男だった。先制された1点を、四回の矢野の適時打で同点に追いついた。今や“お家芸”となった逆転劇の始まりだ。
五回、右前打で出塁した赤星を一塁に置いて、金本が右越え二塁打。赤星を一気に本塁へと迎え入れた。「赤星がいい走塁をしてくれたから打点になってるだけ」。しかし、その赤星を走らせているのが、この“仕事人”でもある。
4打席目の敬遠を除く3度の打席では、常に一塁に赤星を置いた。初回は初球に赤星が走った。三回、四球で出塁すると、浜中の打席で見事な重盗を決める。
そして五回、初球ボール、2球目ストライクを見逃した。カウントは1―1。「1ストライクになったからね。2ストライクまでは待てん」と、右腕・ランデルの外角140キロ速球を力ずくで叩きのめした。
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二回、送りバントの打球が顔面を直撃した矢野、四回には同点タイムリー |
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1年遅れでタテジマを着た同期生の金本を、複雑な思いで見つめていた片岡も続く。同じく五回、二死二塁からこの日2安打目となる左越え二塁打。先発・藪を勇気づける貴重な追加点をたたき出した。
会心―。少なくとも5万3千人にはそう見えた2本の二塁打。しかし、片岡は「風やね」と言うだけだ。スタメン出場した巨人3連戦は、10打数6安打、6打点。打率6割を残しても「まだ3試合や」と足元を見つめる。
アリアスとのレギュラー争いにも「自分にとって他人は関係ない」と言い続けた。ひたすら闘い続けた相手は“自分”だけだった。なめ続けた苦汁が、大舞台での反発力になった。
2人の“FA砲”だからこそできた大仕事。「気持ちええわ、やっぱり」と金本が笑う。風薫る5月。カレンダーを1枚めくっても、虎は強い。本当に強い。(船曳陽子) |