阪神・井川が“奇跡”のスクイズを決めた。顔面に直撃しそうな危険球だった。この1点が、大きく流れを変える。またまた、逆転や。15度目の逆転勝利で貯金は2ケタ「10」に。井川は、ナゴヤドーム初勝利。川上とのエース対決も7戦目にして初勝利を挙げ、もう怖いものはなくなった。
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阪 神 |
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勝:井川4勝
S:− |
本塁打:− |
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頭めがけて迫りくる142キロの直球。三塁走者のアリアスは、迷わずダッシュを切っている。井川は思わず体をかがめる。危険球とも取られかねない完全なボール球。それでも、執念でバットに当てる。五回、一死二、三塁、カウント1―1からの3球目だった。
「スクイズ?運が良かったですよ。前にボールが転がったんで」
確かな手応えを感じた次の瞬間、すぐに全力で一塁まで駆け抜けた。振り返ると、川上がうなだれている。その先、三塁ベンチは総立ちで、沸き上がっていた。
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七回に決勝タイムリーを中日・川上から放つ今岡、この日3打点の活躍
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「今までで一番悪かったんじゃないか」。投球に不満を抱いていた星野監督も、スクイズに関しては「あれはものすごくうまく決めた。憲伸ががっくりきとった」と賛辞だ。
ようやく「鬼門」を突破することができた。01年6月14日(大阪ドーム)から勝っていない、天敵・中日。まだ1度も勝ち星を挙げていない場所・ナゴヤドーム。そして、6戦して0勝5敗と負け続けていた、川上とのエース対決。不名誉な記録すべてに、終止符を打った。
「うれしいです。打ってくれるんで楽です。昨日トレイ(ムーア)が勝って、その流れに乗っていけました」
二回、先頭に四球を出すと、続く谷繁に、カウント2―1から高めに浮いたチェンジアップを、左中間スタンドまで運ばれる。あっさり先制点を許した。三回にも、安打と連続四球で二死満塁のピンチを迎える。そこで先制アーチを打たれた谷繁を打席に迎えたが、145キロの直球で空振り三振を奪って切り抜けた。
「ホームランを打たれても、冷静になれた。満塁で0点に抑えられたのが良かった」。それ以降は中日打線を1安打に抑えると、味方打線はお決まりの逆転劇。7回を投げてマウンドを降りた。
4勝目の井川は今季初めて、勝ち星が先行。「とりあえずゲームをつくれたので」。悪いなりにも結果を残し、苦手意識も払しょくした。もう怖いものはない。15度目の逆転勝利で、貯金は今季初の2ケタ「10」に到達。一時は最大のライバルと目された山田竜をもなぎ倒し、勢いは増すばかりだ。(道辻 歩) |