闘将が「ビックリや」と驚いた今岡のプッシュが、対横浜7連勝への合図だった。決勝点を呼んだ赤星の機動力も効果的。強い阪神がバント、バントの小技攻撃で連勝、貯金を「10」に戻した。デイリー版「バント攻撃」で、土曜日7連勝の虎をご堪能あれ―。
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阪 神 |
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横 浜 |
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勝:下柳2勝
S:ウィリアムス9S |
本塁打:− |
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絶妙のセフティ−バント。トラの核弾頭は小技でも敵をかく乱 |
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どよめいた。スタンドが、一塁側横浜ベンチが、そして誰より驚いたのが、三塁側ベンチの闘将だった。「今岡もやってたな。オレもビックリしたよ」。指揮官でさえ目を点にさせた今岡の“一打”が、対横浜7連勝の扉をこじ開けた。
1点を追う三回一死二塁で、今岡が打席に立った。虎党は快音を待ちわびたが、期待は初球でいきなり“裏切られ”た。
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三回送りバントを決める下柳、投げては5回3失点で2勝目 |
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マウンドには巨漢・ホルト。そして一塁は動きの鈍いウッズ。今岡の狙いは1点にあった。大きく開いた一、二塁間―。「最悪送ればいい(というバント)ではなく、セーフになろうと思ってやった。ホルトを見ていると動きが悪かったからね」。目、頭脳、足、そしてカン。一瞬ですべてを駆使し、目算通りに打球を落とした。
誰もが予期しなかった100点満点のプッシュバント。マウンドのホルト、一塁・ウッズ、二塁・村田が右往左往する。村田が打球を処理した時にはもう、今岡は一塁ベースを駆け抜けていた。
電光石火の三回だった。先頭・藤本が初球を投前へのセーフティーバントで出塁。下柳の初球犠打の後、今岡の名人芸だ。これに赤星が初球を中前にはじき返して応じ、たった4球で同点とした。こうなればもう押せ押せ。金本、浜中と続き逆転に成功した。
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三回、藤本の一塁バント安打から3者連続バントで横浜をかく乱 |
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9日の横浜スタジアムは18年ぶりの3連発に沸いた。しかし、お祭り騒ぎの陰で、虎戦士たちは次の戦略へとシフトチェンジしていた。
この日のマウンドには、横浜のエース格・ホルトが立つ。前回対戦した4月18日には、桧山のサヨナラ本塁打で勝った(1―0)が苦戦した。「ホルトだとそう点は入らない」(星野監督)。だから、揺さぶりをかける。試合前には通常よりバント練習に時間が割かれ、チームとしての意思統一がなされたが、決行したのは選手個々の判断だった。
「昨日(9日)から守備位置は見ていたけど、点差が開いていたので明日にとっておこうと思った」とは藤本。五回にセーフティーバントを決めた赤星も「警戒しているのでカウントを考えてやった」と笑顔を見せた。
赤星はバントで揺さぶった後、金本との間で会心のエンドランを決め、続く浜中の内野ゴロの間に決勝の本塁を踏んだ。「あまり打たれた気はしないけど、バントにやられた…」とは、前後左右に振り回されたホルトの談話だ。
小技で相手のエース級を撃破した。田淵チーフ打撃コーチは「今こういうのを見せておけば、夏場になった時に効いてくる」と言った。また星野監督は、自身のHPの中で「老かいさ」という言葉を使った。この勝ち方は、優勝を目指す上で意義深い。土曜負けなしの7連勝、貯金10復帰は単なるおまけ。老かいさ、したたかさを身につけた星野阪神は、前夜以上に大きな白星を手にした。(船曳陽子) |