子を思う母の気持ちで阪神を見つめる虎党たちよ―。先制打に中押し、ダメ押し連弾の浜中おさむ外野手(24)は、トラの4番として大きく大きく成長しました。猛虎は横浜に8連勝し、貯金は今季最多の11と膨らんだ。ちょっと前までよちよち歩きだった息子たちを、もう信じてもいい。Vに向かって着実に歩を進める足取りは、確かだ。
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阪 神 |
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横 浜 |
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勝:ムーア6勝 |
本塁打:浜中10号、11号 |
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9連戦を締めくくるにふさわしい最終幕。優雅で、雄々しい打球が横浜の空を飛び交った。悠然とダイヤモンドを回るのは、だれでもない浜中だ。これぞ4番の貫録。2度のハイタッチも堂に入っている。指揮官も心から納得し、ベンチ前の儀式に加わった。
二回に4点を追加し、なお二死一塁。金本の盗塁を見届けると、次の143キロ直球を豪快にはじき返した。左中間席上段まで達する第10号2ラン。だが、これで終わらないから盛り上がる。
次打席となった四回、今度は右への3ランで横浜の息の根を止めた。4月20日の横浜戦以来となる連発は、今季3度目の1試合2本塁打。「今までにないようなスイング。ここまで深みのある、納得できる打撃ができている」と、最高の内容にほおを紅潮させた。
母の日には縁がある。プロ初アーチも01年5月13日の母の日。そして2年後のこの日。母の恵美子さん(56)も遠く和歌山から見つめていた。同伴自主トレで話題を呼んだ母も、息子の成長にいつしか戦場から姿を消した。「贈り物は嫁さんがやってくれているけど、いいプレゼントになったと思います」と息子は素直な気持ちを表した。
試合前には“父親”から苦言が飛んでいた。「お膳立てができてないときも、カンカンと打てないとな」と練習中の浜中を見つめ、星野監督がつぶやいた。その2時間後。確かな成長ぶりを見ることになる。
初回、一死三塁で金本が三振に倒れたあとに、右翼線二塁打で先制点をたたき出した。カウント2―2と追い込まれ、好機を逃しかけていた場面での一打。重圧がかかる中での結果は、何よりも大きい。開口一番「あれが4番のバッティングだよ」と指揮官が絶賛したのは、この一打があったからだ。
打ちも打ったり6打点。ラミレスを一気に抜き去り、43打点でセ界の打点王に躍り出た。「それは関係ない」と口をつぐむが、手に残った感触にはうそをつけない。「右方向に打てたことには満足。これをきっかけに次もどんどん当てていきたい」と眼光は鋭さを増していた。貯金は今季最多の11。立役者となった若き主砲は、いつしか大人のプレーヤーに脱皮していた。(鶴崎唯史) |