ピクつくおヒゲがたまりません!負けない土曜日にまた阪神が1対0で巨人を下した。投のヒーローはトレイ・ムーア投手(30)。そして打のヒーローは恐怖の9番、スラッガー・ムーアだ。自慢のヒゲが、投げてピクピク、打ってピクピク。そのたびに敵将・原監督のこめかみがピクピク。ああ、快感…。 |
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巨 人 |
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阪 神 |
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× |
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1 |
勝:ムーア7勝
S:ウィリアムス10S |
本塁打: |
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スコアボードに「0」を並べる。任務遂行。だが、それだけじゃない。己のバットで「1」の数字も刻み込んだ。ムーアが見せた“独演会”。「タイガースファンハイチバンヤー」。聖地に響いた雄叫びが、虎党の酔いをさらに深めた。
ハイライトは四回だ。無死一、二塁から、藤本が犠打を失敗。巻き起こる悲鳴。だが、それはすぐに歓声へと変わる。ムーアが打席に向かう。打線は、途切れない。
1、2球目はファウル。1球見送って、4球目。「次は変化球がくるんじゃないかと思った。自分がピッチャーでもそうしている」。134キロのフォークを一閃(せん)。打球は三遊間を鮮やかに破る決勝のタイムリーとなった。「木佐貫はいいピッチングをしていたし、失投もなかった。たまたま高めに来た球を打てただけだよ」
前日の16日。約20分間、室内練習場でマシン打撃を行った。そこに、巨人軍が球場入り。響き渡る快音と見慣れない姿に、原監督が「新外国人かと思ったよ」と目を丸くした選手、それがムーアだった。通り過ぎる選手たちからも「そら打つわ」などと、口々に感嘆の声が上がったほどだ。
警戒網は十分に張り巡らされた。投手のバッティングに対して、だ。それでも打ち抜いた。与えたダメージの大きさ、深さ。巨人が相手だから、なおたまらない。
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3人で完ぺきに締めたウィリアムスは矢野と勝利のハイタッチ |
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「真っすぐとチェンジアップのコンビネーションがよかった」。本職でも五回まで被安打2、毎回の8奪三振と、最高のパフォーマンスを披露。唯一のピンチは六回。一死一、三塁から阿部に強烈なライナーを許すが、打球は一塁・アリアスの正面へ。「ラッキーな部分はあったね」。笑顔で振り返る余裕がある。
このワンマンショーには星野監督も脱帽だ。「シビレすぎた。やっぱり俺もピッチャーやから、こんないいゲームはないな。緊迫した1球1球見落とせない、息の抜けないゲーム」。八回を投げて降板したムーアの肩を、闘将はポンとたたいてねぎらった。
神話は続く。これで土曜日の試合では8連勝。そして自身も、土付かずの7勝目。「自分一人の力ではない。チームみんなのおかげだよ」というムーアの左腕が、5ロードを築く。この砦(とりで)は、落城しない。(道辻 歩) |