「普通にやれば勝てる」―。闘将の言葉通り、2点ビハインドにもあわてず騒がず、阪神がきっちり逆転勝ちだ。これでVイヤーの85年以来、星野阪神では最多の貯金13を積み重ね、2位に5・5ゲーム差。もう7度目のG倒ですか。この際だから言わして下さい。あ〜満腹、満腹!
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巨 人 |
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2 |
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0 |
0 |
0 |
1 |
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3 |
阪 神 |
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0 |
0 |
2 |
3 |
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× |
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6 |
勝:谷中1勝
S:ウィリアムス11S |
本塁打:金本3号、アリアス8号 |
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視界には上原の姿しか入らなかった。もくもくと白煙が立ち込めてきても、今岡の心は乱れなかった。「とにかく集中。それだけを自分に言い聞かせました」。どんな状況でも動じない。だからこそ、快音を響かせられる。チームに逆転勝利を呼び込める。
2―2の同点で迎えた七回だ。甲子園球場の南側で火災が起こり、その噴煙が浜風に乗って、一塁内野席の後方からグラウンドに流れ込んできた。藤本の右線二塁打をきっかけに、一死三塁の勝ち越しチャンスを作った直後には、球場内が煙で真っ白になった。そこで打席に立ったのが今岡だった。
カウント1―1となった時、あまりの酷さに真鍋球審が一度、間を取った。マウンドの上原は一瞬、表情を曇らせる。
「僕は気になりませんでした。上原の方が、嫌な部分があったかもしれないですね」
その直後。132キロ速球を左中間に運ぶ。白煙など関係ない。研ぎ澄まされた集中力が快打を呼んだ。「みんなの、チームの集中力があって、結果的にランナーをかえせた」。勝ち越し打の直後に試合は7分間中断。そんな悪条件下で持てる力を発揮できる男など、そうはいない。
巨人戦3カード連続の勝ち越しをもたらした立役者は、まだいる。八木だ。再開後の二死満塁から代打で登場。岡島の120キロスライダーを見事、右前にはじき返した。ライト・高橋由の失策も重なってダメ押しの2得点。「煙で見えにくかったけどね」。こちらも弛まぬ心でGを跳ね返した。
貯金13―。星野政権下ではもちろん最多の数字であり、阪神としても優勝した85年以来の快挙である。17年連続で負け越している巨人に対しても、開幕から9試合を終えて7勝1敗1分け。この好ダッシュも優勝した62年以来だ。5を予感させる「吉兆」が、数字の上でもズラリと並ぶ。
「(巨人とは)普通にやれば、そこそこ互角以上にやれる」と星野監督も言い切る。2位・広島とも今季最大の5・5ゲーム差。宿敵を砕き、首位独走の足場も着々と固まっている。
「シーズンは長いですから。集中してやるだけです」と今岡。八木も「星勘定とかはせずに、とにかく1試合1試合に勝つことだけだよ」と口をそろえた。もう「視界」は開けている。どんな苦境も乗り越えられる逞(たくま)しさが、今の星野阪神には備わっている。(岡本浩孝) |