闘将が、燃えた。3分を超える猛抗議。ブロックの“不正投球”から、味方選手を守るために、体を張った。熱い魂は、選手に伝わる。金本の打球は、虎党の希望を乗せ、右中間へ飛び込んだ。決勝の逆転4号2ラン。両リーグ通じて30勝一番乗りは史上初。熱いドラマは、まだまだ続く。
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広 島 |
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阪 神 |
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× |
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勝:谷中2勝
S:ウィリアムス13S |
本塁打:アリアス10号、金本4号 |
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広島・ブロックの投球に烈火のごとく抗議する阪神・星野監督 |
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閉ざされかけた扉を、力でこじ開けた。猛虎の勢いを象徴する金本の一振り。「初仕事やね。阪神に来てから初仕事」。夢の詰まった劇的な逆転弾。実感が込もる。顔の火照りが収まらない。
浜風が、金本を優しく迎え入れた。八回、一死二塁の場面で打席に向かう。すると、それまで強くなびいていたバックスクリーン上の旗が、ゆっくりと垂れ下がった。天からの「GOサイン」。行く手を遮るものは、なくなった。
初球を見逃し、カウント0―1からの2球目。「とにかくセンターへ。詰まってもいいからセンターへ打とうと思った」。146キロの直球を強くたたく。白球は低い弾道で右中間に伸びると、そのまま人波の中へと消えた。鳴り響く地響きを合図に、金本は足の回転を緩め、ダイヤモンドの感触を味わった。
ここ2試合は無安打。「実際に(調子は)悪かった。どつぼ。訳分からんところで急に打てなくなって。やべえと思っていた」。目の前に漂う黒雲を切り裂く一発。それでも心から喜べない。
「これが広島じゃなかったら、もっと気分いいかもしんないな」。20日の広島3連戦初戦。練習中に突然の豪雨のため室内でマシン打撃を行っていた時に、広島の選手がウオーミングアップのために入って来た。
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九回、3人でピシャリと締めたウィリアムス
はアリアスとハイタッチ |
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少し気恥ずかしそうにしながらも、練習後は選手たちと、気軽に談笑した。カープへの愛情を再確認した2日前。そして今宵(よい)芽生えた複雑な感情。タテジマの袖を通していることも、改めて実感できた。
金本ともう1人、逆転劇を“演じた”男がいる。他ならぬ闘将・星野仙一だ。七回、先頭のアリアスに対し、広島・ブロックが投じた2球目。すっぽ抜けた直球が、アリアスの目の前を通り抜ける。そこでベンチから、飛び出した。
「あいつは何回も注意されとる。危険なんだよ。ふいとるうちに入らん」。大声を上げ、体をふるわせた。ベンチから見ていて、ブロックは指につばをつけ、それをしっかりぬぐわずに投げているように見えた。それを何度も続けていたから、激怒した。
「危ないんだよ。投げとる方も、どういうふうに変化するか分からん。手のひらをふいてない。だまされとるんや」。球審の森に、もの凄い勢いで迫る。「疑われる」ような球筋ではなかった」という森球審の言葉を聞いても怒りは収まらない。ベンチから島野ヘッドも出て来たが、選手を守るための猛抗議は、3分以上、続いた。
指揮官が見せた闘志に、スタンドもベンチも熱く燃え上がった。5月の勝ち越し。球団史上初の両リーグ30勝一番乗りも決めた。「明後日から松山で、火曜日から甲子園なんで、超満員にしてください」。今季2度目の5連勝。早くも4度目の3タテを決めたヒーローの視線の先には、悲願の5が見える。(道辻 歩) |