フ〜ッ。思わず息をついた。楽勝ムードが1点差の薄氷V。九回、今季1失点の守護神・ウィリアムスがまさかの2発を浴び、さらに一打逆転の大ピンチを招いたときは誰もが目をつむった。しかし、虎は勝った。これで22年ぶりのカード10連勝。勝ったからいいけど、心臓には悪い…。
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横 浜 |
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阪 神 |
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× |
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10 |
勝:藪4勝S:ウィリアムス16S |
本塁打:金本5号、 |
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九回表、村田に本塁打を浴び、1点差に詰め寄られるウィリアムス |
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声は荒らげない。だが、抑揚のない言葉の裏側には、明らかに怒りが潜んでいた。「終わってみれば、ええ試合やろ」―。星野監督の口からは、自ちょうのセリフまで飛び出した。それも無理はない。楽勝ペースの試合が、最後は冷や汗ものだ。とてもじゃないが、心から笑えはしない。
10―9。わずか1点差の逃げ切りだ。これが序盤から接戦の展開だったら、まだ納得もいく。だが現実は違う。4回終了で10―3。早々と7点差をつけ、横浜の息の根を止めたはずだった。それがどうだ。終盤は、安藤―ウィリアムスの2人まで投入せざるを得ない状況に追い込まれた
この「計算違い」が、指揮官の心をささくれ立たせた。そして怒りの源泉は、ピリッとしなかった先発の藪にある。
佐藤投手コーチは試合後、当初の継投プランを明かした。「(藪は)7回で交代。登板が少ない久保田、中村(泰)に機会を与えたかった」。それがどうだ。急きょ投入した谷中が打たれて、3点差まで詰め寄られた。
すべてのもくろみは、踏ん張れなかった藪のために崩れ去った。「勝利の方程式」を使わずにはいられなくなった。「休ませたかったけど、ああなったらしゃあない」。星野監督の声が、乾きに満ちるのも当然だ。しかも守護神に「傷」が付いたのだから…。
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二回、バックスクリーン右へ250号へ王手となる一発を放った金本 |
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九回からマウンドに上がったウィリアムスだが、一死からまず、来日初被弾となる一発をウッズに浴びた。実に19試合ぶりとなる「失点」を記録すると、二死後には、村田にも被弾。続く代打の小川にも右線二塁打を許して、一発逆転の窮地に立たされた。
最後は何とか万永を遊ゴロに仕留めたが、勝利の瞬間、いつもみせるガッツポーズはなく、両手でヒザを抱えて守護神はうなだれた。「結果的に勝ててよかった。悪い日もあるよ」。疲れを隠せないストッパーに、落胆を呼んだのも、また誤算である。
81年以来、22年ぶりとなる「カード10連勝」は、もっと楽に挙げられるはずだった。「面白かったやろ。見てる方は」。星野監督の言葉は決して本意じゃない。目標は5のみ。だから、一分のスキも与えたくない。このほろ苦さを「良薬」に変えることを、指揮官はただただ望んでいる。(岡本浩孝) |