福井で大復活だ。阪神・浜中おさむ外野手(24)が、代打で貴重な中前適時打を放つと、そのまま右翼の守備につき、さらにダメ押し打までかっ飛ばした。打って守ってこそ本当の浜ちゃん。これからもバリバリ働いてや!3連敗しない阪神は、60試合目で両リーグ最速の40勝に到達した。
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阪 神 |
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勝:井川8勝S:ウィリアムス18S |
本塁打:− |
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日本海の風に押され、ベンチを飛び出す。どよめきに加え、割れんばかりの歓声を浜中は体で受け止めた。
5月20日の広島戦で右肩をねん挫して以来、21日ぶりに定位置復帰。同点打の心地よさに加え、右翼から見る野球が、体を熱くさせた。
桧山の代打として登場したのが五回だ。1点を返し、なお二死二、三塁。さすがに4番を張った男。右前同点適時打は当然のシナリオだった。ベンチが慌ただしくなったのはその後だ。長嶋守備走塁コーチは「行かせてやってください」と星野監督に持ちかけていた。
ベンチ前では中村豊がキャッチボールを始めていた。そんな中、指揮官の一言は単純明快。「いけるなら、いけ」―。迷いはあった。それでも気持ちに勝るものではない。「多少の不安はあったけど、いざとなったらそんなこと言ってられない」。感触の残った手に、さっそうとグラブをつけ、懐かしい場所へ戻っていった。
復帰への道のりは苦しかった。再発防止のために、2キロのダンベルを上げ下ろし連日のように負荷を掛けた。右肩だけに筋肉をつけるとバランスが崩れる。そのため両手に持って地味な作業を続けた。「本当にストレスがたまりますよ」。楽しいのは、代打で出られる1打席のみ。それでもやるしかなかった。
この日の試合前には、長嶋コーチからノックを受けた。三塁ファウルゾーンから一塁ベースへ投げ込む。普段と送球方向の角度を変え、実戦に近いメニューで様子を見た。恐怖心もない。いけるかもしれない―。“Xデー”とみられた17日の横浜戦を待たず、心の中は守備復帰に傾いた。
ベンチから送り出した将の目にも不安はない。「もう大丈夫、気が入っとったら大丈夫や」。七回にはその目に、ダメ押しとなる中前適時打が飛び込んでくる。抜けていた、4番という大きなピースが、パズルにはまるときが近づいてきた。
今季初となる3連敗を阻止し、これで両リーグ最速となる40勝目に到達。6月10日時点での40勝は、球団史上最速だ。それでも浜中にはうれしさ半分。「スタメンで使ってもらえるようにアピールしたい」。首位の雰囲気に乗り切れなかった男も、ようやく勝利の味を感じることができた。(鶴崎唯史) |