台風6号が日本海に大きく逸れ、奇跡的にプレーボールがかかった。この瞬間、球団新となる同一カード13連勝が、ほぼ確定した。赤星憲広外野手(27)の先制打で始まった歴史的な試合を、阪神は手堅いスクイズで締めた。これで貯金24。あの85年の最大貯金「25」にあと1つと迫った。 |
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横 浜 |
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阪 神 |
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勝:ムーア8勝S:− |
本塁打:− |
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お立ち台に上がったのは、やるべき仕事をきっちりと果たした男だった。先制の一打、好機を広げるスチール…。価値ある動きをきっちりと積み重ねたからこそ、赤星にヒーローの称号が贈られた。
「皆さんの応援のおかげです」―
勝利の立役者は、虎党の心をとらえるセリフも忘れない。それがまた大歓声を呼ぶ。スタンドを熱くする。球団新記録となる「同一カード13連勝」。試合前から灰色の雲が空を覆い、試合開始が危ぶまれたにもかかわらず、足を運んだ虎党たちは最後まで、夢のような心地に浸り切った。
この1戦は、赤星の「一言」から幕を開けたといっても過言じゃない。試合前ベンチでの円陣。1人の選手が毎回、声を掛ける恒例行事で赤星はこんな言葉をナインに発した。「初回からいきましょう」―。これを見事に有言実行するから、また頼もしい。
いきなり先頭の今岡が二塁打で出塁。ここで赤星の冷静な判断が生きる。「三遊間が空いていたので」。遊撃の種田が二塁ベース寄りに守っていたことを見逃さず、初球を狙い打つと、打球は鮮やかに三遊間を割った。直後には自慢の足で二塁を奪う。これが桧山の左前適時打を引き出した。
「調子はあまり良くない」という赤星だが、その後も安打を放ち、今季10度目の猛打賞。毎年、夏場に体重が減る男はサプリメントの摂取、「好きではない」というマッサージを受けることで体調を維持する。不断の努力があればこそ、首位打者という今がある。
打線全体も標ぼうする「つなぎ」の打撃を実践し続けた。一発なしで今季4度目となる先発全員の16安打、8得点。七回一死一、三塁では、藤本がスクイズも決めた。相手失策も絡んで、一塁走者のアリアスまで生還。「うまく2点、入っちゃったな」と、これには星野監督も目尻を下げた。各自が与えられた仕事をこなせば、勝利も自然と転がってくる。
これで貯金も「24」に膨らんだ。「相手どうこうを意識する状態じゃない。とにかく1試合、1試合です」。赤星の言葉のように星野虎はこれからも、地道にコツコツと一投一打を積み重ねる。そしてその先には必ず、大きな“実り”が待っている。(岡本浩孝) |