テレビで大写しになった原監督、涙目でしたね〜。これぞ猛虎の猛攻だ。4―4で迎えた八回、桧山進次郎外野手(33)の7号勝ち越し弾が15人攻撃の引き金となる。終わって見れば計20安打で16点。巨人を奈落の底に突き落とし、つけたゲーム差は10…。ごめんなさい。引導、渡しちゃいました。
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阪 神 |
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巨 人 |
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勝:伊良部8勝
S:− |
本塁打:今岡4号、アリアス14、15号、桧山7、8号、矢野7号
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2度と立ち上がれなくなるまでたたき切る。それが勝負の鉄則。4―4、同点に追いつかれた直後の八回だ。先頭の桧山が巨人の3番手・久保の速球をはじき返した打球は、バックスクリーン右へと吸い込まれた。
“4番・桧山”の初アーチ。あえいでいた不振を過去にした。「たまにはいいでしょ」。照れくささが先に立つ。皮肉っぽく笑ってみせた。この7号ソロを火付け役に、八回10安打10得点の猛攻が幕を開けた。
流れは宿敵へ奪われていた。六回の守備で遊撃・藤本と左翼・金本の連係ミスを犯し、1点を返されていた。七回には伏兵・鈴木から伊良部が同点2ランを被弾。「同点にされてオレが一番ガックリきた」と、さすがの星野監督も思わず負けを覚悟した。
ドラマはここから動き始める。
桧山のアーチで1点を勝ち越すと、一死二塁から片岡の右中間二塁打で2点目。二死二塁で代打・八木の中越え二塁打で3点目。今岡が左越え二塁打、赤星が四球、金本が右前打…。
打者一巡しても止まらない。桧山が今度は右前適時打で6点目をたたき出す。アリアスが左前へ運ぶと、とどめは矢野の右翼への3ランだ。
片岡、藤本も安打で出塁し、二死から9者連続出塁。「ホンマにすごかった。流れが全部行ってしまった後に(向こうの)流れを吹き飛ばした。初戦を獲るという気持ちが伝わってきた」。指揮官がこれほど舌を巻いたことは、かつてない。
試合前、ミーティングで田淵チーフ打撃コーチは、今季一番短い言葉でゲキを飛ばした。「絶対勝つぞ!」。ともに3連勝中。しかし、追いかける巨人は捨て身で挑んでくる。のみ込まれるわけにはいかない。ひと言にすべてを込めた。
「とにかく僕のところで終わらないようにしようと思った。ホンマにええムードや」と矢野。前回優勝の85年以来となる貯金25。今季最多の20安打16得点で、巨人に再び10ゲーム差をつけた。
九回にも右翼へ2発目のアーチを放った桧山に「使っていたかいがあった」と星野監督。だが、選手会長は浮つかない。「久しぶりに大きな仕事をした」と言いつつ「明日も試合がありますから」と、余韻を打ち消すことも忘れない。
指揮官の驚嘆は続く。「あいつらの集中はすごいな」。強烈なけん引力で“負け犬”と呼ばれたチームを率いてきた。いまは違う。Vへ突っ走る戦士の背中を、闘将が追いかけ始めている。(船曳陽子) |